よみがえる10年前の記憶

 学習院大学時代に関東学連選抜(現・関東学生連合)チームの一員として箱根駅伝を走ったプロランナーの川内優輝さん(36)は、今回の事態を選抜チームが編成されなかった2014年の90回大会と重ね合わせる。

「あのときも今回と同じように、『選抜チームを編成しない』という議題が本当にぱっと出てきて、多くの委任状を背景に執行部提案が通ってしまいました。どさくさ、というか、不明瞭な流れ作業のような手続きで重要なことが決まってしまった。その後、東大などを中心に『それはおかしい』という声が上がって、91回大会以降、選抜チームが復活したんです」

 もし、学生連合チームの編成に意義が感じられず、ほとんどの加盟校が廃止を望んでいるのであれば、それは仕方ないだろう。

「でも、実際には3分の1以上の加盟校が署名押印をして、明確に存続を望んでいるわけです」

 関東学連選抜が編成されるようになってから、スポーツ推薦等を導入して、部の強化を開始した陸上部が10校以上あるという。

「例えば、育英大学、芝浦工業大学、駿河台大学、創価大学、東京国際大学、明治学院大学。古豪では筑波大学、立教大学とか。箱根で1人が走ったことによって、チームの強化につながった。そう考えると、連合チームは役目を終えたどころか、むしろ役目を増している」

 一方、連合チームに対して、「同じ釜の飯を食った駅伝仲間」ではなく、「寄せ集めで、まとまりがない」という人もいる。

 すると、川内さんは自らの箱根駅伝の思い出をとめどなく語った。

「そう、確かに寄せ集めです。モチベーションや選抜チームに対する思いには差がありました。でも、大手町を9位でゴールインしたときの一体感は忘れられません。10区で猛烈に追い上げた佐野広明選手(麗澤大)をみんなで胴上げしたときは、うそいつわりなく、ぼくたちはチームだった」

 さらにチームメートの名前を次々と挙げ、その後のつながりを熱を込めて語る川内さん。その表情からは、川内さんの人生にとって、当時の学連選抜チームがいかに大きな存在となっているかが伝わってきた。

「学生連合チームは存続してほしいですし、できればオープン参加で順位をつけないのではなく、昔のように順位を争うガチンコ勝負に戻してほしい」

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