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 SNSでたびたび話題になるサイゼリヤは、総店舗数1500店以上、売上高は1300億円を超える大手ファミレスチェーンである。その始まりは千葉県市川市の小さな店舗だったが、1号店は客同士のトラブルによって全焼してしまう。創業者である正垣泰彦氏がこの逆境を乗り越えサイゼリヤを大企業に育て上げられた背景には、正垣氏の母のある教えがあった。※本稿は、正垣泰彦『サイゼリヤの法則 なぜ「自分中心」をやめると、ビジネスも人生もうまくいくのか?』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。

嫌なことが起きたら、
「ありがたい」と喜ぼう。

 今まで何度も、絶体絶命の窮地に立たされてきました。修羅場と言っていいような状況も、幾度となく潜り抜けてきました。

 そうした嫌なことや、望まないことが起こると、私も少なからず傷つきます。年をとっても、経営者としてキャリアを重ねても、ずしんとした苦痛が堪えます。

 でも、だんだんと、嫌なことが起こると「むしろありがたい」と感謝するようになってきました。

 そもそも「嫌なこと」は、それまでの自分自身の言葉遣いや行動、様々な行為が原因となり、その結果として起こっています。自分が蒔いてしまった種が、実を結んで、いま目の前に立ちはだかっている。

 自分で種を蒔いているのだから、それは自分で乗り越えられる程度の試練ということです。それをクリアすることで、必ず成長できるという仕組みになっています。

 嫌なことが起これば起こるほど、自分自身は大きく強くなれるし、やる気もかき立てられる。嫌なことが起こるからこそ、人生が面白くなる。ですからこの年になると、「嫌なこと」が起きないことのほうが不安に感じるようになりました。

「最近、成長の機会がないけど、大丈夫だろうか?」と。

 もちろん、嫌なことは嫌です。でも、心の奥底には「ありがたいなあ、感謝しなきゃいけないなあ」という感情があります。

 つまり「嫌だなあ」と「ありがたい」という正反対の気持ちが同居している。

 矛盾しているようですが、それこそ生きているということでしょう。

 私には、「嫌なことから逃げる」という選択肢などありません。

「目の前にあるものが最高!」

 目の前に起こっている事態、眼前に突きつけられた状況は、必ず「最高」。そのときの自分をより正しい方向へと導いてくれる、道しるべなのです。

 たとえば、傲慢になっていたら謙虚になることを、周りが見えなくなっていたら冷静になることを教えてくれているのです。

客同士のトラブルで1号店が全焼
そのとき、母がかけた言葉とは?

 サイゼリヤ1号店の開店から1年9カ月後の出来事です。

 当時は朝4時まで深夜営業をしていたので、お客様には水商売やヤクザの関係者も多く、お客様同士の喧嘩は日常茶飯事でした。

 ある夜のこと、ヤクザ同士の口論が激しくなり、ついに店のストーブを投げてしまいました。その弾みでカーテンに火がつき、店内に燃え広がってしまったのです。

「みんな逃げろ!」

 私は、まずお客様と従業員を出口から避難させました。泊まり込み用の布団で、1人で消火に努めましたが、なかなかうまくいかない。

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「全焼したから逃げるなんてもったいない」