選書プランあるホテル
まろさん自身、東京・日本橋浜町の「HAMACHO HOTEL」のような現代的なデザインのホテルに積極的に泊まっていた時期もあれば、箱根にある「富士屋ホテル」のようなクラシックホテルに足しげく通っていた時期もある。そしていまは、日本各地にある純和風の旅館に魅せられているという。
「一人で過ごすとしても、具体的になにをすればいいのかわからない」。まろさんのもとには、そんな悩みが届くこともある。
「そんなときは、一つの案として『読書』という目的を持ってみることを提案しています」
日常のなかで積み上げてきた本を持ち込んでもいいし、“選書プラン”のあるホテルに泊まってみるのもいい。一人で過ごす時間と「本」の相性は抜群だ。
バーテンダーの話に耳を
クラシックホテルのバーカウンターに一人座り、バーテンダーの話に耳を傾けるのも、かけがえのない時間だ、とまろさんは言う。
「改装をした際の裏話を聞いたり、創業時の従業員マニュアルについて教えていただいたり。バーテンダーさんのみが知る情報を耳にすると、歴史あるホテルならではの高いホスピタリティーの理由がわかることがあります。点と点がつながっていくような面白さがありますね」
明治や大正時代に建てられたクラシックホテルは、世界中の人々が集う社交場であり、西洋文化の発信元でもあった。だからこそ、現代では見られない和洋折衷の建築様式やデザインをディテールに至るまで堪能できるのも魅力だという。
心地よい空間に身を置くことで、自宅の動線やインテリアを考えるうえでのヒントを得られることもある。ホテルステイは、生活の質を高めるうえでの“アイデアの宝庫”とも言えるのだ。
かつて「おひとりさま」という言葉には、独身で自立した女性という意味合いが含まれていた。だが、まろさんはこの言葉を「一人で過ごす時間」と定義している。独身でも子どもがいても、女性でも、男性でもいい。
「自分だけの時間」を意味する「Me Time」という言葉が海外で広く浸透しているのと同様に、「自分をケアする時間」としての意味合いを大切にしている。
「自分の好きな場所で、好きなように過ごして、自分を取り戻す。それがひとりホテルの醍醐味です」(まろさん)
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2024年8月12日-19日合併号