その土地ならではの食や文化の感動を誰かと共有する旅もいいが、ひとりだからこそ味わえることもある。年に200泊以上、「おひとりホテル」を楽しむまろさんに、その魅力を聞いた。AERA 2024年8月12日-19日合併号より。
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部屋に足を踏み入れたときの清々しい気持ち、スタッフとの一期一会の出会い。そして、チェックアウトの際の名残惜しい気持ち。日常を飛び出し、ホテルに滞在すると、思わず時間を止めたくなるような瞬間が何度となく訪れる。
家族や友人と訪れるのだって、もちろんいい。けれど、エモーショナルな“場所の記憶”がより強く残るのは一人でのホテルステイならでは、と『おひとりホテルガイド』の著者、まろさんは言う。まろさんは、ひとり時間の過ごし方を提案するメディア「おひとりさま。」を主宰。2019年頃から、東京や地方のホテルを一人で訪れてはその魅力を広く発信している。
「私の場合、複数でホテルに滞在すると、会話の内容や楽しい時間を共有した友人たちのことが記憶に残る。けれど、一人での滞在の場合はスタッフさんとの会話や目にした光景がより強く印象に残ります。意識をホテルに集中させ、細部にまで目を向けられるのも、ひとりホテルならではの楽しみだと思います」
口コミより直感大事に
ホテルを選ぶ際、大切にしているのは「フィーリング」だという。室内の写真を目にしたとき、心躍る感覚を得られるかどうか。窓の外に広がる景色を眺めている自分を想像できるかどうか。必要以上に調べすぎず、直感を大切にしている。
「ホテルに関する口コミを読み始めると、さまざまな意見があり混乱することがあります。それよりも、純粋に『行ってみたい』という気持ちを大事にしています。実際に足を運ぶうちに、自分の好みがわかるようになりますから」
季節を感じられる場所が好きなのか、内装やデザインに惹かれるのか。「泊まって良かった」と感じるホテルを思い返すと、好きなものの共通項が見えてくる。