また一つ注意したいのは、テケテケと同じく両足のないカシマ怪談、または「下半身切断」怪談との共通性だ。テケテケと同時期、次のような噂もまた広まっていた。

 北海道のどこか、札幌とも室蘭とも旭川ともいわれる。とにかく雪も降らない凍てつく夜が明けた朝のことだ。列車に轢かれて腰から下が切断された少女の死体が発見された。だが下半身は踏切のそばに転がっていたのに、上半身はかなり遠ざかった位置にあった。

 しかも積雪の上には這ったような跡がみえる。おそらく昨夜の強烈な寒さにより、切断された傷口が一瞬で凍りついてしまったのだろう。そのため少女は上半身だけでしばらく生き延びていたのだろう。激痛に身をよじらせ、雪の上を這いずりまわりながら……。
 

🔳(解説)

 テケテケは事故などで下半身が切断されて死んだ、両肘や両手で移動する化け物であり、1990年代に学校の怪談の一種として知名度を高めた。その頃には「大きな鎌を持っている」「こちらの両足を奪いに来る」「まっすぐしか走れないので横っ飛びに避ければ助かる」など様々なバリエーションに変化したが、初期はもっとシンプルな存在だった。

 テケテケ怪談の発祥については、松山ひろし『カシマさんを追う』(2004)、学校の怪談編集委員会『学校の怪談大事典』(2009)によると、1980年代初頭の沖縄との説が有力視されている。確かに私個人の調査でも、その頃の沖縄でテクテクーという同様の怪談が広まっていたとの情報を得ている。

 ただし1970年代末の大阪でも、「テケテケ」名称ではないものの上半身だけの化け物が迫りくる怪談(先述した「再現」による驚かせも込みで)が知られていたらしいので、発祥はもっと古いのかもしれない。

 また北海道でも、かなり早い時期にテケテケと同様の怪談があったのが面白い。私が調べた限り、特に旭川エリアが古く、少なくとも1980年代前半にはテケテケまたはシャカシャカの名称で同様の噂が定着していた。

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怪談の歴史が乏しい北海道ならではの