出走メンバーについては、現地入り後の練習での調子を見ながら決めることになるが、決勝を“走れ”なかったサニブラウンにはアンカーでの爆発を期待でき、リレーに“賭けて”バトン練習を積んでいる桐生と栁田の2人も、本番までに精度を極限まで上げてくるはずだ。ただ、誰が出走したとしても日本チームがやることは変わらない。前回の東京五輪と異なり、100m9秒台の自己ベストを持つ選手は、サニブラウン(9秒96)と桐生(9秒98)の2人のみだが、これまで通り、チームワークで「個の力」の不足分を補うことで強豪国とのタイムさは必ず縮まる。

 優勝候補筆頭は、100m金メダルのノア・ライルズと銅メダルのフレッド・カーリーを擁し、2023年世界陸上でも優勝したアメリカで間違いなく、東京五輪の100m金メダリストのマルセル・ジェイコブスを擁して2023年世界陸上で2位に入ったイタリア、パリ五輪100m銀メダルのキシェーン・トンプソンの他にも力のあるランナーを揃えるジャマイカがメダルの有力候補になる。日本が、この“3強”の壁を崩すことができるか。さらに2023年世界陸上で日本(5位)よりも1つ順位が上だったイギリス、そして地元のフランスも侮れない存在であり、上位の“ミス待ち”だけではメダル獲得は難しい。

 まずはリラックスすること。レースを楽しむこと。前回の東京五輪での「地元開催&金メダル期待」という過度のプレッシャーは今回、ない。登録メンバー8人中5人が五輪初出場となるが、その“怖いもの知らず”をプラスに変えることができれば、メダル獲得は十分に可能だ。身体能力だけではなく、日本の技術、集中力、チームワークを、パリの舞台出発揮してもらいたい。