理由は数あれど、分かりやすいのは調整能力の低下である。

 どうも近年、ピーキングのミスが目立つ。こちらも単純な数字の比較になるが、個人種目に限り、国際大会代表選手選考会で出した記録で泳げば、実は個人で派遣標準記録を突破した選手のうち、男子200m背泳ぎの竹原秀一を除く18人が決勝に進めたのだ。

 たらればを言い始めたら切りがないが、自己ベストであればメダルに手が届いた選手が9人、9種目あったのも事実。

 今回、バッチリピーキングに成功したのは、男子400m個人メドレーで大躍進の銀メダルを獲得した、松下知之ただひとり。

 自己ベストまではいかないまでも、国際大会代表選手選考会時の記録を上回ることができた選手は、女子100mバタフライの平井瑞希、女子200m平泳ぎの鈴木聡美、男子200m個人メドレーの瀬戸大也、そして男子100mバタフライで主将の水沼尚輝の4人だった。

 リレーまで幅を広げれば、ここに池江璃花子、村佐達也、眞野秀成、松元克央が加わることになる。

 つまり、3月よりもピーキングに成功して泳げた選手は、代表チームのなかで半数にも満たない、たった3分の1なのである。

 先に述べた通り、ピーキングは身体や泳ぎの調子だけではなく、メンタル面も非常に重要だ。そこを加味すると、松下は名伯楽・平井伯昌コーチに支えられたところが大きい。平井瑞希は、2016年リオデジャネイロ五輪の池江を彷彿とさせる、高校生らしい思い切りの良さが好記録につながっている。

 鈴木、瀬戸、水沼は国際大会経験豊富であると同時に、あることに気づく。鈴木は神田忠彦コーチとの師弟コンビは実に15年にもおよぶ。水沼も下山好充コーチと10年来の付き合いだ。長い付き合いのなかでの信頼関係が、選手たちのメンタルを安定させていたことは間違いないだろう。

 また、瀬戸は少しイレギュラーではあるものの、オーストラリアの名将、マイケル・ボール・コーチに師事している。瀬戸や松下は、期間は短くても、心から信頼して「このコーチのアドバイスがあれば大丈夫」と思えるメンタルが持てる関係性を築けている。そのことが、彼らの心の支えになったはずだ。

暮らしとモノ班 for promotion
ファン付き作業服や水冷服が12%オフも!スポーツ&アウトドア のおすすめサマーセールでいいもの見っけ♪
次のページ
チームとしても“機能不全”?