日本競泳勢で唯一のメダルを獲得した松下知之
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 まずは、選手たちを称えたい。世界最高峰の舞台に立ち、自分の力を出し切るということは、フィジカル面、メンタル面ともにとても難しいことはよく理解できる。昔に比べれば、応援や励ましはもちろんだが、反対に心ない言葉もたくさん選手自身に届くようになった。多くのプレッシャーがあるなかで、自分のやるべきことを見極め、たった一瞬のために努力する。そして数回のレースで全力を出し切るために、心技体すべてを調整し整えていく。その作業は、果てしないものである。

【写真】競技終了後の「発言」で株を下げた人といえばこの人

 五輪という舞台に立った選手たちは、国内外問わず皆がそうだ。フランスの英雄となったレオン・マルシャンは、自分が理由でタイムスケジュールの変更が行われた。そこまでして、もし金メダルが獲れなかったら……。一度でもそう考えてしまったら最後、恐怖で脚がすくんでしまうかもしれない。さらに、入場すれば『レオン』の大合唱。そうして迎えた7月31日、マルシャンは見事に男子200mバタフライと平泳ぎの2種目2冠を達成。200m平泳ぎで優勝したあとの、マルシャンの喜びようは今も目に焼き付いている。

 日本選手たちも、マルシャンほどではないにしろ、連日テレビや新聞、雑誌、ラジオ、ウェブなどで報道され、SNSでは舌戦が繰り広げられた。多くの人が注目するなか、結果を出すことは、非常に難しいことであっただろう。そのなかで、五輪を戦い抜いたことは、素晴らしいことなのである。

 さてその一方で、データは正直だ。銀メダル1、入賞数は13。決勝レースを戦った選手の数は、9人。自己ベストを更新した選手は1人だけ。新記録は、0だ。

 これが、競泳日本代表の現実である。

 今回、競泳日本代表チームが掲げた『金を含む複数メダルの獲得と、全員の決勝進出』という目標は、当然未達。入賞数こそ前回の東京五輪を上回ったが、メダル数は3から1に減少。東京五輪では新記録が1(男子4×100mメドレーリレー)あったが、今回はゼロ。まさに、ゆゆしき事態であると言っても過言ではない。なぜこのような状況に陥っているのか。

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日本競泳勢の“苦戦”のワケは…