歌人たちの楽園・小倉山の中腹に立つ常寂光寺

【常寂光寺】かなり混雑するので、開門と同時の9時~10時に訪ねたい。多宝塔周辺は壮観だがあまり混まない穴場

 慶長年間(1596〜1614)に日禛上人により開創された常寂光寺。歌人が好んで別荘を構えた小倉山の中腹に建つ。嵐山一帯の中でも、小倉山は古くから紅葉の名所として親しまれてきた。かつては『小倉百人一首』の選者として有名な歌人・藤原定家の山荘があり、その跡が仁王門北側に残っている。入り口から仁王門までの紅葉のトンネルは息をのむほどの絶景だ。

朱塗りの塔と紅葉が競演!旧嵯峨御所 大本山 大覚寺

【旧嵯峨御所 大本山 大覚寺】天龍寺などのエリアから離れているため、混雑は比較的落ち着いている。16時ころからの夕景が味わい深い

 旧嵯峨御所 大本山 大覚寺は、平安時代初期に嵯峨天皇の離宮として建立された。当時、藤原道長の供としてやってきた藤原公任は古い滝殿跡を眺めて「滝の音は絶えて久しくなりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ」と詠んだ。滝は枯れたが、その名声は今も残る、という歌だ。

「光る君へ」では町田啓太演じる公任も、さらに1000年を経た21世紀まで自らの歌が残り、往時の名声を伝えることになるとは、想像もしていなかっただろう。現在は、大沢池のほとりにある朱塗りの心経宝塔と紅葉の赤が美しく競演し、見る者を魅了している。

紫式部が「源氏物語」に描いた地に佇む大原野神社

【大原野神社】市内中心部から離れているため、あまり混雑しない。特に午前中は観光客も少ないので、見事な紅葉のトンネルを満喫できる

 紫式部は大原野神社を氏神と崇め、大原野の風景を愛していた。「源氏物語」29帖「行幸」の巻には、冷泉帝の華やかな行列が大原野へ向かう様子が描かれている。

 平安時代の歌人・藤原伊家もこの地を訪れ、散る紅葉を惜しむ歌を詠んだ。見どころは、一の鳥居から三の鳥居までの参道。紅葉のトンネルが約200メートルも続く様は壮観。この絶景を見逃す手はない。

(構成 生活・文化編集部/写真 PIXTA)

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