角田夏実(右)との準決勝で反則負けとなり、抗議するバブルファト(YUTAKA/アフロスポーツ)

 消極的姿勢、かけ逃げなどの偽装攻撃が指導の対象となるが、この見極めが非常に難しい。高校の柔道関係者は警鐘を鳴らす。

「柔道が時代の流れと共に変容しています。一本背負いや大外刈りなど技の応酬が醍醐味なのに、反則を含めてポイントを稼いだ方が勝つ風潮になっている。かけ逃げしている選手が積極的姿勢に見えてしまい、相手の選手に指導が宣告されるケースが多い。審判の裁量に委ねられる部分が大きいので、副審2人と満場一致で指導とみなした場合に宣告するなどルールを改正すべきです。今のままでは指導の取り合いで退屈な試合が増えてしまう。五輪だから注目されていますが、柔道本来の魅力を発信できる試合内容が少なくなれば、ファンが離れますよ」

主審への誹謗中傷が深刻化

 柔道は「JUDO」として、世界的な人気競技となった。ルールも年月とともに、変更を重ねてきた。国際柔道連盟(IJF)は16年に技の評価ポイントから「有効」を廃止し、「一本」と「技あり」に。18年からは「合わせ技一本」が復活した。男子の試合時間は5分間から4分間に。技の優劣を重視し、時間無制限の延長に入る方式に変更した。パリ五輪に向けても様々な修正がされたが、今大会の内容を見ると改善の余地が多い。

 気になるのは、不可解な判定が「誤審」とフォーカスされて、主審に対するSNS上の誹謗中傷が深刻になっていることだ。

 柔道男子100キロ級元日本代表の高木海帆さんはこの問題について自身のXで言及。

「誤審ないからー!!!!!!!!!!!!」と綴った後に、「100歩譲って『今の誤審?』みたいな呟きはまだしも、そこから審判や相手選手を攻撃したり、差別的な発言につなげるのは1兆パー違う」と訴えた。

「柔道は主審の権限が大きすぎるように感じます。今のままでは重圧が掛かり、誤審の標的になって叩かれることが続く恐れがある。審判の負担を軽減する観点からも、監督による映像確認、指導を出す基準を見直すなどルール改正が必要だと思います」(前出のスポーツ紙記者)

 「不可解判定」が選手たちの活躍より注目を集めてしまうのは柔道界にとっても不本意なはずだ。判定の責任を主審1人に背負わせないためにも、早期のルール改正を期待したい。

(今川秀悟)

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