開催中のパリ五輪・パラリンピックのシンボルや競技コースには、フランス人が 誇りに思う歴史や文化が随所に込められています。パリ在住の文筆家・森田けいこさんに、思わず人に語りたくなる5つの“うんちく”を教えていただきました(朝日新聞出版の小中学生向けニュース月刊誌『月刊ジュニアエラ』8月号の取材を再構成しています)。
【図】100年前のパリ五輪、今とどう違う? 違いはこちら!うんちく1 ロゴマークのくちびるは誰のもの?
パリ大会のロゴマークには金の円の中に聖火とくちびるが描かれていますが、このくちびるはフランスを擬人化した女性「マリアンヌ」を表しています。イギリスは「ブリタニア」、スペインは「エスパニア」というふうに、ヨーロッパの国は自分の国を擬人化し、女性の名前で呼ぶことがあります。マリアンヌはフランス政府の公式ロゴや切手にも採用されています。
マリアンヌは実在の人物ではありませんが、フランス革命で民衆が王政を倒し、自由を得たことを表す「自由」のシンボルとしても親しまれています。七月革命を題材にドラクロワが描いた「民衆を導く自由の女神」という作品では、三色旗を掲げたマリアンヌが中央に描かれています。
うんちく2 マスコットは「自由」を表す帽子の化身
ドラクロワの絵でマリアンヌがかぶっている赤い帽子は「フリジア帽」と呼ばれるもので、ギリシャ・ローマ時代に解放された奴隷がかぶっていたものです。解放……つまり、自由の象徴で、教科書などによく掲載されているフランス人権宣言の扉絵にも描かれています。パリ大会のマスコット「フリージュ」は、このフリジア帽の化身です。
フランス人権宣言は「人間は生まれながらにして自由かつ平等の権利をもっている」とうたっている点が大きな特徴で、日本国憲法にも影響を与えています。民衆が立ち上がり自らの手で勝ち取った「自由」を大切にするフランス人の心意気を、パリ大会のロゴやマスコットから感じとってみてください。
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