全行程でなく一部のみの介助も
気になる価格だが、有償のサービスであるため、それなりの費用がかかる。旅行介助士®の「介助料」だけでなく、同行時の「旅費」もかかるため、たとえば飛行機や客船などを利用する高価な旅行だと、高額になるケースもある。安く抑えるには、自宅を出発してから戻るまでの全行程に同行する「スルー介助」ではなく、観光地での食事や宿泊先での入浴など、行程上の一部のみをサポートする「スポット介助」を依頼する方法もある。
「スポット介助は対応しているエリアがまだ多くはないものの、今後は普及していくと思います」(糠谷さん)
糠谷さんによると、「同じレベルの介護度の友人とともに行く旅行に一人、旅行介助士®をつけて、その費用を複数人で負担するのもひとつの手」という。節約になる。その場合、複数人を一人の旅行介助士®がみるため、介護度が高ければ、現実的ではない。しかし日常生活動作(ADL)にそれほど介助の必要がなければ、問題ないだろう。
その方法を活用したケースで、協会に最も相談が多いのは「デイサービス(通所介護施設)などで一緒に過ごす利用者同士で旅行を企画し、そこで働いている介護職員(旅行介助士®の資格をもつ介護職員)に付き添いを依頼する」といったものだ。
「介護職員は施設業務の一環としてではなく、公休を使って“副業”として同行する。そうすれば待遇改善にもつながる。これが理想的ではないか」(糠谷さん)
同行する介護職員は顔なじみであるため、利用する側もさほど不安にならずに、旅先でいつものように楽しめる。また、介護する側にも(利用者の)日頃の体の状態がわかっているのでサポートもしやすいというメリットがある。
旅行に行くためにリハビリを
そんなことが、現実になっている場所がある。
リハビリ特化型デイサービスの「リハビリスタジオてぃーだ桜木」(千葉市若葉区)だ。
ここで働くスタッフの多くが旅行介助士®の資格を持っている。しかも、デイのコンセプトは、「旅行に行けるカラダをつくる!」。
この施設で行うリハビリのすべてが、「旅行」につながっている。
階段昇降のリハビリは、「バスに乗るため」であり、起き上がりの練習は「畳の部屋に泊まる時のため」というように。ややこじつけに聞こえるかもしれないが、それでも日々行うリハビリの目的を「旅」に絡めることで、高齢者たちもモチベーションが高まる。
ブックコーナーには旅行関係の本がずらり。すべてが「旅」につながる通所デイサービスで、「旅行に行くために、リハビリを頑張りましょう!」と、利用者もスタッフも共通意識を持って、楽しく明るく、必死にリハビリを実施している。旅行という目的があるからリハビリを頑張れるのだ。