旅行介助士®との旅(写真/日本介護旅行サポーターズ協会)
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 高齢になっても外出したいし、歩行に不安があるけど旅行がしたい。田舎に墓参りに行きたいし、きょうだいに会いに行きたい。温泉にも入りたい――。そんな願いをかなえる存在がある。 

【写真】「旅行に行きたい」を原動力にリハビリに励む

 有償の介護ヘルパーだ。

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 資格の違いによって「トラベルヘルパー(外出支援専門員)」と言ったり、「旅行介助士®」と言ったりするが、いわゆる介護旅行の専門員だ。近場から旅行まで、希望に沿った場所へ付き添う外部のヘルパー(介護職と旅行添乗員を兼ね備えた人材)と考えるとわかりやすい。

 介護保険外のサービスであり、その金額は介護度や依頼する内容によってかなり幅があるが、超高齢社会のいま、この職業が注目を浴びている。

ちょっとしたサポートあれば

 旅行に行きたいと願う高齢者と、連れていきたいと思う子どもたち。それでもかなわずに、旅行に行けずじまいになってしまっているとすれば、その原因の多くが、「連れていく側、連れていかれる側(本人)それぞれの、あるいは双方の不安が払拭(ふっしょく)できない」からということが少なくない。本人にとっては、「転倒したらどうしよう」「大浴場で滑って大けがでもしたらどうしよう」といった不安に、「家族に迷惑はかけられない」という遠慮が重なることもある。

「実際にはちょっとしたサポートがあれば旅行に行ける人って、たくさんいるんです」

 こう話すのは、介護事業に特化したコンサルティング会社を経営する糠谷和弘さん。

 糠谷さんは、民間資格「旅行介助士®」の認定をと登録を行う一般社団法人日本介護旅行サポーターズ協会の代表理事も務めている。もとは、大手旅行会社JTBの社員。高齢者でも障害者でも旅先で不自由なく過ごせたら、という思いは20年以上前からあった。自身の祖父が高齢者施設で、起き上がれるのにもかかわらず、ベッドに寝かせきりという粗末な介護を受ける姿を見て「介護を変えたい」という思いが芽生え、この業界に足を踏み入れた。

 日本介護旅行サポーターズ協会では、介護福祉士など介護の現場での勤務経験がある人に向けた研修と検定試験を行い、旅行介助士®の資格認定と人材の養成をしている。

 旅行介助士®の資格を取得すると、旅行会社の主催するパッケージ旅行にも添乗できる資格「国内旅程管理主任者™」も同時取得できる。協会では、資格取得者と、旅行希望者のマッチングを行い、「介助士同行の旅行」をサポートしている。日帰り旅行から宿泊を伴う旅行まで幅広く対応するほか、介助士の「性別」や「年代」「介助経験」など依頼者の希望に配慮して紹介をしている。

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