昨シーズンは30試合をこなし、社会人の全国大会にも出場した。選手には遠征費や競技用具は負担しているが、給与までは支給できない。このため、アスリート採用してくれる地元企業を紹介している。
その一人、田嶌羽咲(たしまつばさ)さん(19)は昨年4月、福岡市内の業務用家具メーカー「アダル」に社内初のアスリート採用社員として迎えられた。同社は田嶌さんのために、月~木曜の午前が練習で午後が仕事、金曜日は休みで、土日が試合や練習日という特別シフトを用意した。物流セクションで家具を段ボールに詰めて出荷するのが主な仕事。体力のある田嶌さんは職場でも重要な「戦力」だ。
高校卒業後、エイジェックに内定していたが、子どもの頃から憧れていた川端さんがチームを発足させると聞き、「一緒にプレーできるチャンス」と思い入団した。「野球をしている時間は一瞬で過ぎていく」と言う田嶌さん。練習から職場に戻る移動の車内で、昼食のおにぎりをほおばりながら出勤することも。充実した生活を送っているように見えるが、肩の痛みがピークに達した昨年、不調はメンタルにも波及した。
「なかなか他の人に相談できず、一人で悩みを抱えていました」(田嶌さん)
元気をなくしている田嶌さんに、食事会で声をかけてくれたのが楢岡さんだ。
「一番期待しているのは羽咲やから」
その一言で気持ちが切り替わった。田嶌さんは言う。
「職場でもグラウンドでも先輩や仲間に囲まれ、自分には好きなことができる居場所がある。周りの支えがあってこそだと痛感しています」
■人という宝を得た喜び
社会人として仕事と両立させながら野球を続けるメリットについて川端さんはこう話す。
「選手としてだけではなく、社会人としても一人前になろう、とチーム内で呼び掛けています。野球と仕事の両立は大変ですが、引退後のセカンドキャリアを見据える意味でも貴重な経験になると考えています」
川端さん自身、企業回りの貴重さを日々実感している。