九州ハニーズを立ち上げた川端友紀さん(左)とチームメートの田嶌羽咲さん。全力プレーで女子野球の発展に挑み続ける(写真:九州ハニーズ提供)
九州ハニーズを立ち上げた川端友紀さん(左)とチームメートの田嶌羽咲さん。全力プレーで女子野球の発展に挑み続ける(写真:九州ハニーズ提供)
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 職業にならなくても、「好き」をあきらめなくてもいい。好きなことを続けたい人のために舞台を提供している人たちがいる。社会人の女子野球チーム「九州ハニーズ」の奮闘に迫った。AERA 2023年4月10日号の記事を紹介する。

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 女子プロ野球で活躍した川端友紀さん(33)は昨年、社会人の女子野球チーム「九州ハニーズ」を立ち上げた。

 川端さんの兄はプロ野球ヤクルトスワローズの川端慎吾選手。兄の背中を追い、小学3年生のときから野球を始めた。18年までの9年間、女子プロ野球リーグで活躍。その後、社会人野球チーム「エイジェック」でコーチ兼選手を務め、チームメートだった楢岡美和さんとともに新チーム立ち上げを決意した。

「社会人の女子野球界でエイジェックはずば抜けて待遇が良く、プレーに専念できる環境に感謝していました。でも、こうした環境はごく一部。女子野球界全体の発展に貢献したいと考えました」(川端さん)

 とはいえ、新チーム設立をツイッターで宣言した22年元日の時点で決まっていたのは、チーム名とユニホーム、拠点を福岡市に置く、ということだけ。設立宣言は不退転の決意を内外に示すのが目的だった。

「九州は野球が盛んな土地ですが、女子野球については知らない人がほとんどでした」

 そう振り返る川端さんは、楢岡さんらとともに選手兼コーチのほか広報や営業も担当。試合日程を組んだり、ファンとの交流イベントを企画したり、オフシーズンの企業回りや選手を獲得するトライアウトも担う。なかでも、スポンサー企業を募る営業活動は苦労と感謝の連続だったという。

「『えっ、女子が野球やってるの?』と驚かれるのが大半でした。女子野球のレベルを言葉だけではなかなかうまく伝えきれず、『とにかく球場に観に来てください』と頭を下げる繰り返しでした」(同)

 コロナ禍と重なり、「今は経営難だから」とスポンサー契約を断られる一方、「こんな時だからこそ」と応援してくれる経営者も。知り合いの経営者を紹介してくれる社長もいてスポンサー企業は現在25社。選手は16人登録している。トライアウトで「もう野球を辞める予定でした」と打ち明ける選手や、野球が好きで自分で軟式野球チームを作って監督までしていた選手もいる。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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