また、固形物が大きくホースに吸い込まれないときも大変だ。
ホースの口の角度を変えて吸い込ませると一気に流れ込むため、ホースが暴れる現象が起こる。吸引者が「走るよー」という声をかけ、残りの2人はしっかりとホースを固定し、器物の損壊を防ぐ。
3人のチームワークにより収集作業が続けられていく。
きれいにし尿を取ることを心掛け、借りた水を便槽に流し込み、固形物が残らないように全て吸い取る。留守中に収集するときは、収集が完了した旨を伝えている。たくさんの細やかな配慮を施しながら作業を行っている。
バキュームカーのタンクがいっぱいになってくると「し尿等下水道放流施設」に向かい、そこに汚物を降ろして再度現場へと向かっていく。
「臭い」の声、屈辱的な体験を重ねて
バキュームカーには脱臭機を装備しているが、作業では臭気を伴うため子どもに限らず大人からも「臭い」と言われたり鼻を摘ままれたりする屈辱的な経験を前田氏は重ねてきた。
たとえば収集作業中、中学生の一団が街の美化活動の一環でごみ拾いをしながら近づいてきたときのこと。前田氏はホースが暴れてぶつからないよう、道の端に寄せて足で押さえ「ご迷惑をおかけしております」と言った。
しかし、生徒のうちの一人がわざとらしく大声で「くっさ!!きも!!」と言い、それに続くように幾人もの生徒が、にやにや笑いながら「くさいなぁ。きもいなぁ」と吐き捨てて去っていった。
この暴言は、その列が通り過ぎるまで吐かれ続けたという。列の前後には教員がついていたが、謝罪はなされず、作業員の方々と目を合わせることもせず、そそくさと去っていった。