先日、次のような光景に出くわした。
登校途中の中学生の集団の横を清掃車が通ったとき、そのうちの1人が迷惑そうな口調で「清掃車、臭いな」と大きな声をあげて言ったのだ。
確かに臭いはした。しかし、社会に必要な仕事に従事している人に向かって大きな声で言う言葉ではないだろう。しかも「清掃車自体が臭い」のではない。「排出するごみが臭い」のである。
中学生の集団は清掃車を馬鹿にしながら過ぎ去っていったが、関わりを持ちたくなかったので注意しなかった。だがしばらくしてから、注意しなかった自分を後悔した。
活躍しているバキュームカー
ごみ収集以外の臭いが伴う業務といえば「し尿収集」があげられる。現在では水洗トイレが普及しているため、都市部ではし尿収集にあたる衛生車「バキュームカー」をそれほど見ない。
しかし何らかの理由で下水道が整備できない地区や工事現場の仮設トイレにはし尿収集が必要であり、バキュームカーが活躍している。そしてその業務に従事している方々も当然いる。
筆者はし尿収集業務に携わる公益財団法人東大阪市公園環境協会の前田真氏(36)と偶然知り合い、東大阪市でのし尿収集を見学させていただいた。
本稿では、し尿収集業務の実態と、そこに携わる方々が職業差別を受けながらも自らの仕事の価値を高めて乗り越えようとしている状況を述べてみたい。