視察した岐阜県の矢作ダムで都議補選の結果について答える岸田文雄首相=代表撮影

自民党衆院議員の魂胆

「岸田さんの下で解散・総選挙となれば自民党は政権を失う」(自民党執行部の一人)というのは、多くの自民党衆院議員の実感だろう。だからこそ、9月の総裁選では、石破茂元幹事長ら「新しい顔」を後継総裁・首相に取り替えて、総選挙で生き残りを図りたいというのが自民党衆院議員の本音である。

 今から35年前、当時の竹下登首相がリクルート社の関連企業から多額の資金提供を受けていたことが発覚。世論の批判を浴びて退陣に追い込まれた。後継の自民党総裁・首相と目された伊東正義総務会長(当時)は「自民党の中身を変えずに表紙を替えてもだめだ」と断言。派閥政治という自民党の体質を改めない限り、総裁・首相だけを取り替えても有権者の理解は得られないという考えを強調した。今回も派閥体質の是正や政治資金の透明性の拡大など本質的な自己改革には踏み出さずに、「表紙」を替えるだけで危機をしのごうという魂胆が透けて見える。

 一連の裏金事件を通じて露呈したのは、岸田自民党が抱えている三つの深刻な欠陥である。

 第一に、安倍派を中心に自民党の衆参国会議員の4人に1人が、政治資金規正法に抵触する裏金を受け取っていたという事実だ。民間企業には厳しいコンプライアンス(法令順守)が求められている中で、自民党の古い体質に対する世論の批判が強まったのは当然だ。

 第二に人材の枯渇だ。裏金事件の広がりに対しても、自民党内から糾弾する声は上がらず、政治資金規正法の改正が中途半端な内容になっても、自民党内で「真の政治改革」を唱える意見はほとんど聞かれない。6月23日に通常国会が閉幕した後に、岸田首相の責任を追及する声がポツポツと出始めたが、大きな流れにはなっていない。自民党が2012年に政権に復帰して以来、長期にわたった安倍晋三政権下で「追い風選挙」に慣れた若手議員が選挙地盤も弱く、党執行部に盾突く気迫がないことは確かだ。世襲議員も増えて、「事なかれ主義」がはびこっている。総裁選に向けても、中堅・若手が「決起」する動きも見えてこない。自民党の人材不足は極まってきた。

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