「オレのお金じゃなくなる!」お金に固執し始める父

――お父さまの行動で困ったことなどはありましたか?

トメ 父は穏やかな人なのですが、ものすごく「お金」に固執するようになりました。私が家に必要なものを買ってきても、「勝手にお金を使わないで」と怒ったり、「お金は足りるのか」と不安に駆られたり。

 一番困ったのは、銀行の定期預金を普通預金に移そうとしたときのことです。

 もし、両親が施設に入ることになれば、まとまったお金が必要になることもあります。両親の預貯金をすぐに引き出せる形にしたかったのです。

 ところが、父は「オレのお金じゃなくなる!」と思い込んで、断固拒否。

 私が「お金を移すだけだよ、お父さんのお金のままだよ」と何度も何度も説明して、やっと理解してもらって、私が代理で銀行に手続きに行き、銀行が父の同意を得るために電話をすると、「ダメだ! オレのお金じゃなくなる!」って。結局、ふりだしに戻るんです(笑)。

――認知症と診断されると銀行口座が凍結されるとも聞きますよね。

トメ 2021年に、本人のための限定的な支払いに限り、家族がお金を引き出すことを認められるようになったんです。でもその対応も銀行によって違いがあるなぁと感じました。

 母も認知症になってから定期預金を解約したのですが、お金については理解力が高くて、解約もスムーズでした。そのとき、銀行の方に父の事情を説明すると「お父さまの手続きもいっしょに進めます」と言っていただけて、とても助かりました。

『マンガで解決 親の認知症とお金が不安です』(上大岡トメ/主婦の友社)から
『マンガで解決 親の認知症とお金が不安です』(上大岡トメ/主婦の友社)から

 銀行といえども、結局は「人」対「人」だと思います。親のお金を親のために使おうと思っていること、認知症のせいでそれができなくなって困っていることを誠実に伝えました。それで何とかなる場合もあるし、ならない場合もありますが、銀行員さんという生身の人間に訴えることが大事だと思います。

料理も着替えもできなくなった母

――お母さまも認知症を発症したんですね。

トメ 父の認知症がわかって半年ほどしたころ、母が体調を崩してベッドから起き上がれなくなりました。そのとたん、認知機能がカタカタと落ちていきました。

 母はとても料理が上手な人だったんですが、手順がわからなくなり、作る気力もなくなってしまった。さらに、人の顔もわからない、着替えもできないという状態になりました。あっという間に父を追い越してしまい、そのぶん父が少しシャキッとしましたね(笑)。

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離れて暮らす両親が認知症に