イラストレーターでエッセイストの上大岡トメさんは、3年ほど前、両親が相次いで認知症を発症。遠距離での認知症介護の怒濤の日々や不安について、自身の体験をもとに本にまとめました。両親の異変に気づいたきっかけは何だったのでしょうか。
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父からのトンチンカンな電話
――トメさんは神奈川県の出身ですが、ご結婚してからは山口県に住んでいます。離れて暮らす両親の異変に気づいたのは、どんなことがきっかけでしたか?
トメ 父にはパーキンソン病、母には脊柱管狭窄症があって、数年前から要支援1の介護認定は受けていました。でも2人は介護保険に頼らず、自立して暮らしていました。
ところが2021年3月、電話での父の話に「?????」と感じることが増えたんです。
たとえば、父は毎週スーパーにオンラインで注文を入れていたのですが、父の体調が悪いときに私が代わりにネットで注文してあげたんです。そしたら数日後、父が電話で「スーパーから連絡がきて、本人以外が注文しちゃいけないと言われた」と言うんですよ。
そんなこと、あるはずないのに……と思ってスーパーに問い合わせると、父に電話した記録はないって。
「もしや、父の妄想?」と、サーッと血の気が引きました。
そのころから、父の電話の様子がおかしくなったんです。普通に会話していたはずなのに、途中で突然別の話題になってしまう。母も「お父さん、ちょっとおかしいよね」って。
「これは(認知症が)きたな……」と思い始めました。
――お父さまは認知症の検査を受けたんですか?
トメ はい。でも、ストレートに「病院で検査を受けよう」と言うと嫌がられると思ったので、父が定期的に通っている脳神経外科に事前に電話でお願いして、受診のときに先生から「ついでに検査しましょう」と言っていただきました。
結果は、アルツハイマー型認知症でした。
まれにですけれど、認知症の原因に脳腫瘍など大きな病気が隠れていることもあるそうです。何か異変を感じたら、まずは親のかかりつけ医などに電話して相談するのがいいと思います。