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 非正規雇用の労働条件は正社員に比べると様々な格差があり、コロナ禍では身の安全まで脅かされる事態に。正社員としてキャリアを積み、収入を増やす手立てはあるのだろうか。AERA 2024年7月15日号より。

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「職場における、雇用形態による分断はあると思います」

 と話すのは、桜美林大学健康福祉学群准教授で、『ルポ貧困女子』著者のジャーナリスト飯島裕子さんだ。

 例えば、ボーナスは支給されない、社員と同じ健康診断が受けられない、社員食堂が使えないなど当事者以外は忘れてしまいがちな様々な格差が存在する場合があるという。その分断がわかりやすい形で露見したのはコロナ禍だった。

 飯島さんが取材をした派遣社員の女性は、コロナ禍の中、上司から時短勤務を提案された時、断ったという。時間給のため、仕事時間の短縮は給料の減額に直結するからだ。緊急事態宣言の中、社員は全員在宅、事務所は派遣や請負社員ばかりだったという。飯島さんは、

「正規と非正規の格差を当然のことだと思ってきたけれど、こんなにも住む世界が違うのかと感じたのは初めてだという言葉が忘れられない」と思い返す。

 女性活用が叫ばれている今、「キャリア」「活躍」とは無縁の女性たちがいるのだ。

「様々な事情からあえて非正規を選択する人もいます。しかし多くの場合、賃金も保障も最低ラインで、制度自体がスティグマを伴うぐらいになっている。その人の能力をもっと見てほしいと思います」(飯島さん)

 親の介護結婚・出産などで正社員から非正規雇用に働き方を変えた埼玉県在住の女性(50)は、小学生の2人の子どもがおり、周囲からはこれからお金がかかるとの声をよく聞くという。会社員の夫の給与だけでは厳しく、

「年金も含めて、国が決めるお金の分配の仕方を考え直してほしいのが、今の切実な願いです」

 と話す。多くの女性たちと向き合ってきた飯島さんも、こう訴える。

「非正規雇用者の賃金を上げ、格差をなくす必要があります」

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