『きみのお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』(1650円〈税込み〉/東洋経済新報社)ひょんなことで知り合った中学2年生の少年優斗と投資銀行に勤務する七海が、ボスと呼ばれる大富豪のアドバイスのもと、お金の謎を解きながら社会のしくみを学ぶ物語。経済の知識のない子どもはもちろん、十分な知識を持っているはずの大人でも、お金の本質とあるべき社会の姿に気づかされ、心を揺り動かされる一冊だ。「読者が選ぶビジネス書グランプリ 2024」総合グランプリを受賞

 前著『お金のむこうに人がいる』でこうした問題提起をしたことで、国会議員など政治家にレクチャーしたり、霞が関の官僚と情報交換したりする機会も得られた。しかし、有権者の意識が変わらなければ政治家は動かない。

「お金の奪い合いゲーム」の勝者を目指すだけの世の中では、周りは敵だらけになってしまう。だれもが暮らしやすい社会を実現するには、市井の人々の意識を変えることが必要だ。多くの人に、特に将来を担う世代にこの考えを届けるため、2作目となる本書はだれもが手に取りやすい小説の形にすることを決めた。

「自分ひとりの意識が変わったぐらいで社会は変わらないと考える人が多いのですが、社会は私たちの一つひとつの選択や行動で作られています。あらゆる社会課題は決して他人ごとではなく、自分ごとだとわかってほしいんです」

 社会現象を巻き起こすような本を作って、人々の意識と社会を変革するのが田内さんの目標だ。そのために「100万部売れる本を作りたい」と言うと、多くの編集者は苦笑いしたというが、そんなことであきらめたりはしない。

「0.1%でも可能性があるなら、チャレンジすると決めているんです。1千分の1と思えば無理に感じても、二つの道を10回選べば1千パターンの道があることになる。10回の選択を間違えなければ叶うはずなんです」

 3人の子の父親でもある。執筆や講演活動を通して、子どもたちがつくる未来を、お金の向こうにいる“人”を大切にできる、生きやすい社会にしていこうと訴える。

(ライター・森田悦子)

AERA 2024年7月15日号

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