エルメスは、南大東島の駆除事業で捕獲され、殺処分の対象となりましたが、なんとかねこかつで保護することが叶いました。
美しいけれど、猫にとっては日本一厳しい土地で生きてきたエルメスは、まったく人に慣れていませんでした。ご飯皿を代えようとするだけでお皿を叩き落とす。人影が見えるだけで「ウー!」と唸っている。
新しい飼い主さんを見つけるために、できる限り人慣れさせたほうがいい。こういった人に慣れてない猫を人に慣れさせる、預かりボランティアさんに託すことにしました。
預かりボランティアさんとは、保護した猫を一般家庭で一定期間預かってもらうボランティアさんのことをいいます。生まれたばかりの乳飲み子をある程度の大きさになるまでお世話をするミルクボランティアや、エルメスのように人に慣れていない猫を人に慣れさせるボランティアなどがいます。
エルメスを託す預かりボランティアさん宅には、ほかの猫はいません。エルメスの人間とだけの生活がはじまりました。
預かりさん宅でも、エルメスの威嚇は続きました。近くを通るだけでも、「パッ!パッ!」と空気砲が飛びました。
しばらくすると、預かりさん宅の生活にもなれ、運動神経の良いエルメスは、部屋の中を縦横無尽に駆け回るようになりました。ただ、「シャー!シャー!」や「パッ!パッ!」といった空気砲はあいかわらず続きました。
そして1月半もすると、食いしん坊なエルメスは、手からおやつを食べるようになりました。ただ、「シャー!シャー!」や「パッ!パッ!」といった空気砲はまだまだ変わりませんでした。