新外国人野手の苦戦はここ数年続いている印象だが、その原因はどこにあるのだろうか。まず一つ大きいと言われているのがメジャーでフリーエージェント(FA)になった選手の契約がまとまるのが年々遅くなっているということだ。実績のある選手でもキャンプイン直前まで去就が決まらないということも珍しくない。キャンプインがメジャーと比べても早いNPBの球団にとっては、そこまで有力選手の動向を待つことが難しいという点もあるのではないだろうか。

 もう一つはアメリカでプレーしている選手の情報が以前と比べても簡単に得られるようになったということである。メジャーではその選手のデータについて詳細まで公開されるようになり、限られた映像だけに頼っていた時代とは違い、来日前から長所と欠点が明らかになっているのだ。もちろんそういったデータはその選手を獲得した以外の球団もチェックしており、それを元に攻め方を考えていることは間違いない。対戦しながらデータを整えていた時代とは大きく変わってきていることは確かだろう。他にも日本の投手のレベルが上がっていることももちろん要因として大きな一つと言えそうだ。

 このような現状を考えると、外国人選手、特に野手については来日してすぐに中軸として十分な活躍を見せる例は今後もなかなか出てこないことが予想される。そのことは当然NPB球団の関係者も理解しており、近年ではメジャーで実績はなくても、まだ若くて成長の見込みがある若い選手を育成選手などで獲得している例が増えているのだ。現在日本ハムで活躍しているマルティネスはキューバ出身の選手だが、中日で力をつけて成長した代表例と言える。また、巨人で活躍して昨年オフにトレードでソフトバンクに移籍したウォーカーも独立リーグから発掘してきた選手だ。

 外国人選手も即戦力だけでなく将来性を考えて獲得する。そんな時代になってきているのかもしれない。(文・西尾典文)

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
 
 

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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