棚の隅に生息する多数のトコジラミ=清水一郎さん提供

 夏秋医師が提唱するのが、「うそ寝作戦」だ。部屋を暗くした状態で30分ほど寝たふりをする。トコジラミがいれば、吸血するために人間に近づいてくる。30分ほどして照明をつけ、本当にいるのか、寝具まわりを確認するのだ。

「うそ寝作戦」、3晩決行してみると

 この「うそ寝作戦」を3晩決行して見つからなければ、トコジラミはまずいないという。

「私の外来の患者さんで、トコジラミが原因だろうと思われる人がいました。ところが、『そんな虫は見たことがない』と言う。その方に、『2、3回でいいから、うそ寝作戦をやってください』とお願いしました。しばらくすると、『やはり、いました』と、トコジラミをいっぱい持ってきました」

 こんな事例が多いそうだ。

 ちなみにこの「うそ寝作戦」にも弱点はある。冬場はトコジラミの活動が鈍るので、被害もないが、あぶり出すこともできない。

2種類の殺虫剤を併用

「うそ寝作戦」で運悪くトコジラミの生息が確認できてしまったら、駆除を行おう。

最近のトコジラミは一般的な家庭用殺虫剤(ピレスロイド系殺虫剤)に耐性がつき、効果が乏しくなっているので、専用の殺虫剤を使う必要がある。

 夏秋医師によると、ふたつの殺虫剤の併用が望ましいという。

 ひとつは、スプレー式なら「トコジラミ ゴキブリ アース」(アース製薬)、「コックローチPA」(KINCHO)、「バルサンまちぶせスプレー」(レック)。もうひとつは燻煙(くんえん)式の製品で、「ゼロノナイトG」(アース製薬)がある。

 後者の燻煙式殺虫剤は広範囲への効果が期待できる。ただし、火災報知器や寝具、衣類などはカバーで覆ったり、ポリ袋に入れたりする必要がある。

「燻煙式はカバーをつけた所にいるトコジラミは駆除できません。なので、トコジラミの通り道になる寝具やタンスの周囲には、スプレー式の製品を噴霧しておく。この組み合わせで駆除を数回繰り返せば、撲滅に近づけると思います」(夏秋医師)

 うそ寝作戦であぶり出し、見つけたら、専用の殺虫剤を駆使して駆除する。業者に相談するのもいい。だがまず、基本を徹底すべしと夏秋医師は言う。

「大切なのは、トコジラミを『持ち込まない、持ち出さない、持ち帰らない』こと。これさえ徹底していれば、トコジラミの蔓延(まんえん)は絶対に防げます」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)