新たな命題あと10年をどう働くか(イラスト:サヲリブラウン)
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 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 賑やかな商店街から少し離れた住宅街。その一角にある柔らかなアイボリーの壁を持つマンションに、ホッと一息つける一室がありました。

 以前、本連載が私のマッサージ放浪記だった時代があります。その際、よく登場したゴッドハンドのAさんが20年以上勤めたサロンから独立し、遂に自分の城を築きました!おめでとうございます。

 Aさんは、愛される施術者の条件をすべて兼ね備えた稀有な人。体を預ける相手として必須条件である温厚な雰囲気と性格、常に技術を更新する仕事に対する熱心さ、そして結果を体感できる施術。私も10年以上頼ってきました。

 定期的にちゃんと通ったほうが体にはよいのですが、「はやく次の予約を入れてください」とプレッシャーをかけることもない。端的に表すなら、現状をまるごと受容し、解決に導いてくれるような人。

 常連客も多く、いつ独立しても大成功間違いなしだったAさんが、50歳の背中が見えてきたあたりでようやく独立。逆に、なぜいま?と気になり尋ねると、「もっとお客様と向き合いたかったから」と答えが返ってきました。

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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