安楽のパワハラ問題で会見し謝罪する森井球団社長(左)と顧問弁護士(2023年11月30日)

パワハラの被害者は10人にも

 1年前は安楽がメキシカンリーグでプレーしている姿を想像すらできなかった。

 安楽は高校時代、済美(愛媛)のエースとして2年のときに春夏連続で甲子園に出場。春は準優勝し、夏は今も大会最速記録である155キロを投じた。2014年のドラフト1位で楽天に入団し、21年からセットアッパーで3年連続50試合登板。27歳と経験値を重ねてこれからキャリアの最盛期を迎えると思われていた。だが、昨年のシーズンオフに暗転した。

 安楽が複数のチームメートにパワハラ行為をしていたことが複数のスポーツ紙で報じられる事態になり、森井誠之球団社長は昨年11月、仙台市内で記者会見を開いて安楽のパワハラ行為を認め、謝罪した。会見では、在籍する選手やコーチら計137人にアンケートを実施した結果を発表したが、92%が回答し、被害を受けたのは約10人、ハラスメント行為を見聞きしたのは約40人に上ったことも明かした。

 安楽は「契約保留選手名簿」から外され、自由契約となった。事実上の解雇だった。

古巣に復帰の可能性は…

 楽天の球団OBは表情を曇らせる。

「うーん……表現が難しいですけど、根っからの悪い奴には見えなかった。僕は一緒にプレーしたわけではないけど、グラウンドで会ったら姿勢を正して挨拶をしてくれました。他の選手に聞くと、頭の回転が速いし気が利くので、先輩にはかわいがられていたみたいです。ただ、中堅の年齢になり、後輩の模範になる自覚を持たなければいけなかった。本人が冗談やふざけてやったとしても、相手が苦痛に感じればパワハラです。そこの一線は越えてはいけない。安楽だけでなく、その行為を黙認していた周りの人間にも責任はあると思います」

 安楽は今回の処分で猛省している姿勢を見せ、メキシカンリーグで再出発を図った。今後NPBに復帰する可能性はあるだろうか。

 注目されるのは古巣の楽天だ。安楽と同学年の辰己涼介、小郷裕哉、太田光、鈴木翔天、藤井聖、渡辺佳明がチームの主力となり、今年の交流戦では球団史上初の優勝を飾った。

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