AERA 2024年7月1日号より

三つの心理的特性「手段」「集団」「年齢・世代」

 いじめるのは、かつてのようにドラえもんのジャイアンのようなガキ大将タイプではなく、しずかちゃんのように清楚な優等生。ネット時代では、ジャイアンのように暴力を振るえばそれを動画に撮られ拡散され、逆にいじめられる。しずかちゃんがLINEなどを駆使し、いじめの頂点に立っていることも珍しくないと竹内教授は言う。

「いじめの動機も、かつてはあの子をいじめたらスカッとする快楽的な理由でした。それが最近は、教育的な動機で『あの子は嘘をつくから』などもっともらしい理由をつけます。そのため親も教師も、いじめと気づかないことさえあります」

 社会心理学者で大阪大学の綿村英一郎准教授は、心理的な面から子どもたちの間でネットいじめが起きる背景には三つの特性があるという。

 一つ目は、ネットという「手段」の特性。二つ目は、学校という「集団」の特性。三つ目は、子どもという「年齢・世代」の特性だ。

「まず、ネットいじめは、手段として直接手を下すわけでも相手の苦しむ顔を見るわけでもありません。しかも、子どもたちはSNSでの投稿に慣れているので、いつもの投稿の延長のように、匿名でできるため、罪悪感を抱きにくいことがあります」

 二つ目の「集団」。これが、子どものネットいじめで最も重要なポイントだという。学校という集団の中で、子どもたちはメンバーが固定されている。社会心理学の言葉で「関係流動性」と言い、子どもたちの世界は村社会のように流動性が低く、このメンバーが嫌だと思ってもすぐに変えることができない。こうした集団では強い同調圧が働き、誰かが誰かをいじめていても「ノー」と言えず、放置してしまう仕組みが生まれる、と。

「そして、今の子どもたちは、常に何かと比較したり比較されたりして、強い評価懸念や承認欲求、自尊心からくる不安を覚えフラストレーションを抱えやすくなっています。その原因を直接解決できなければ、スッキリする手段としてスケープゴートを探すことになります。子どもたちにとっていじめる理由は何でもよく、極端なことを言えばスケープゴートが欲しくてたまらないのです」

(編集部・野村昌二)

AERA 2024年7月1日号より抜粋

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