ネットいじめは閉ざされた空間で行われるため、被害が表面化しづらく、どう防ぐかが課題となっている(写真:Getty Images)
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 パソコンやスマホを通じた、ネットいじめが増え続けている。背景には、ネット利用の低年齢化や、学校という「集団」の特性などがあるという。AERA 2024年7月1日号より。

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 きっかけは、「ぬいぐるみ」だった。

 小学校6年の女の子は、クラスのリーダーの女子から、クマのぬいぐるみをお土産にもらった。女の子はそのぬいぐるみの写真を撮ってクラスのLINEグループに載せ「このぬいぐるみ、かわいいでしょ?」という意味で、「このぬいぐるみ、かわいくない」と書き込んだ。すると、全員の「既読」がついたが誰からも返事がこなくなった。翌朝、学校に行くと誰も話しかけてこない。リーダーの女子は、女の子以外で別のLINEグループをつくり女の子を追いやった。女の子は孤立し、そのまま不登校になった。

「2012年くらいからスマホの登場によって、ネットでのトラブルはLINEが中心となりました。しかも、LINEは匿名性が担保されないので、仲間外しや無視など陰湿になります」

 こう話すのは、公立中学の元教員で子どもとネットの問題に詳しい兵庫県立大学の竹内和雄教授(生徒指導論)。冒頭の話は、竹内教授が実際に聞いた事例だ。

 ネット上のいじめが増え続けている。文部科学省の調査では、22年度に認知された小中高などのいじめは計68万1948件。そのうちパソコンやスマホなどを通じた「ネットいじめ」は2万3920件と5年前の約1.9倍で、過去最多を更新した。背景に何があるのか。

 竹内教授は、「ネット利用の低年齢化がある」と指摘する。

 竹内教授自身も委員として関わった内閣府の「青少年のインターネット利用環境実態調査」では、21年度のネットの利用率は0歳ですでに11.6%、1歳で33.7%、2歳では過半数を超え62.6%になった。親が家事などで忙しい時、子どもにYouTubeなどの動画を見せているからだという。

「スマホの所持率も、前倒ししています。所持率が過半数を超えたのは、19年と20年はいずれも12歳で、前者が55.7%、後者が61.5%。しかし、21年は過半数を超えたのは11歳で61.8%、22年は10歳で61.4%となりました」

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