これまでの最年長は「94歳」
だが、ハローワークに通ったものの、年齢制限の壁にぶち当たった。やる気や能力、健康状態に関係なく、年齢の数字だけで門前払いである。
横引シャッターは以前から高齢者が働いており、これまでの最年長は94歳の平久(ひらひさ)守さん。2022年の2月に自宅で亡くなったが、その2日前まで出勤していた。78歳で採用され、ものづくりの経験を生かし仕事を続けた平久さんの奮闘ぶりは、メディアにも取り上げられた。
「妻がテレビで平久さんが登場している番組を見て、僕に教えてくれて、それで面接を受けたんです」(金井さん)
一方、関根さんは、首都圏の自治体で公共施設などの設計にたずさわってきた。定年間近のころ、住民から煙たがられるような施設の建設に携わったときには、反対する団体からマイクで猛烈な糾弾を受けたこともある。
「ものすごい圧でした」
それでも、仕事が好きで、定年後も働きたいと考えていた。金井さんと同様に、友人がテレビを見て横引シャッターを知り、面接を受けて採用された。
かつて務めた役場までは徒歩で通っていたが、今は電車で一時間半。社会人生活で初めて、行きも帰りもラッシュにもまれる日々だ。
最初は週3日の勤務だったが、自身の希望で現在は週5日、フルに働いている。
建物の設計に比べると、シャッターの設計はかける時間が格段に短い。セミオーダーのため、材質、大きさなど、同じものを設計することは二度とない。
「どこまでも突き詰められるのが設計の仕事で、ある意味で終わりがありません。納品する期限までの、どこで納得できるか。その点がこの仕事の肝だと感じています」(関根さん)