定年制は企業の勝手なルール
市川社長の考えはいたってシンプルだ。定年制はあくまで企業側の勝手なルールであり、横引シャッターが右にならう必要はどこにもないということ。
「まだまだ活躍できるのに、60歳になったというだけで会社員はおしまい。職場に残ったとしても、同じ仕事を続けたとしても、うんと給料を減らされる。これって企業側の下心みたいなもので、フェアじゃないですよね。年齢を理由にして雇用形態や給料を変える、などということはうちでは絶対にやりません。ただそれだけなんです」
前出の2人は76歳で入社し6年目の金井伸治さん(81)と、入社わずか1年半の“ルーキー”関根久雄さん(69)だ。同社のシャッターは一部をオーダーメードできる「セミオーダー」で受注しており、2人とも前職の経験を生かし設計を担当している。
同じ担当は3人。この日休んでいたひとりは74歳で、関根さんが最年少だ。
金井さんが就職を決意したのは、一つ年下の妻が大腸がんになったことがきっかけだ。年金だけでは治療費に不安があり、働くことを決意した。
とはいえ、そこに悲壮感はなかった。
「毎日、家で夫婦2人だと、妻も僕がうっとうしいと思うでしょう。いいタイミングだったんじゃないですか」と金井さんは笑う。