守護神として安定した登板を続ける栗林

「お前で打たれたら本望だ」

 印象的な光景がある。昨年の春先に守護神・栗林良吏の状態が上がらず、4月だけで4敗を喫した。勝ちパターンでひっくり返されるとチームに大きなダメージが残る。だが、新井監督は栗林を責めることはなかった。

 4月20日の阪神戦で、9回に登板した栗林が3連打を浴びて2点差に迫られ、さらに無死一、二塁のピンチを迎える。球場が阪神ファンの地鳴りのような応援に包まれ、栗林の表情が強張る中で、三塁ベンチを出た新井監督が穏やかな表情でマウンドに向かうと、栗林の背中に手を当てて声をかけた。

「おまえで打たれたら本望だから。思い切って投げろ」

 栗林は後続を抑えて逃げ切った。その後、登録抹消された時期もあったが、6月にセットアッパーとして徐々に輝きを取り戻すと、シーズン終盤は守護神として復活し、18セーブ15ホールドを記録。今季は24試合登板で、すでに15セーブ6ホールド、防御率0.40と抜群の安定感を誇る。

 抑えを経験したことがある別のセ・リーグ球団の投手はこう語る。

「救援失敗が続くと自信がなくなる。大げさでなく、もうマウンドで抑えられないと恐怖感を感じてしまうんです。そんな辛い状況で新井監督に温かい声を掛けられて救われたでしょう。広島を見ると、失敗しても監督が矢面に立ってくれる。こんなチームでプレーできるのは幸せですよ」

 栗林だけではない。試合前の新井監督を見ると、結果が出ていない選手にも普段と変わらず声をかけて談笑している姿が見られる。傍らには藤井ヘッドコーチの姿が。首脳陣が選手の様子に目を配り、グラウンドで最大限の力を発揮できるように神経を注いでいる。

 交流戦に入って、広島はソフトバンクに3連敗するなど2勝4敗と厳しい戦いが続く。これからやってくるだろういくつもの壁を乗り越えて、新井監督と選手たちは秋に優勝の美酒を味わえるだろうか。

(今川秀悟)

暮らしとモノ班 for promotion
50%オフは当たり前!?中には70%オフのアイテムも!Amazonの在庫処分セールで掘り出し物みっけ♪