4番打者としてチームに貢献する小園

指導者経験なく「リスク大きい」との声も 

 小園と共に「新井野球」の申し子となっているのが、遊撃を守るプロ4年目の矢野雅哉だ。打撃が課題で守備固めや代走が主な役割だったが、今季は守備能力の高さを買われて小園を三塁に回し、遊撃のスタメンで起用され続けている。打席に立ち続けることで打撃の対応力も上がっている。菊池涼介との二遊間は、12球団屈指の強固なコンビと言えるだろう。

 他球団のコーチは、新井監督の相棒である藤井彰人ヘッドコーチの能力を評価する。

「現役時代から頭の回転が速く、先を読む洞察力に優れた捕手でした。広島のベンチワークを見ると藤井コーチの頭脳が発揮されていると感じます。小技で揺さぶったり、ヒットエンドランでチャンスを広げたりして、少ない安打で効率よく得点を取る。投手の継投策も絶妙です。藤井コーチの入閣を強く要望したのが新井監督だと聞いています。同学年で、阪神で共にプレーしている。グラウンド外でも野球談議が熱を帯びることが珍しくなかったので野球観が合うのでしょう。不可欠な名参謀だと思います」

 広島は16年から球団史上初のリーグ3連覇と黄金時代を築いたが、19年から4年連続Bクラスに低迷。丸佳浩(現巨人)、鈴木誠也(現カブス)と主力選手が次々にチームを離れ、若返りが急務となっていた。育成と勝利。2つのタスクを全うできる人材として白羽の矢が立てられたのが、新井監督だった。

 とはいえ新井監督は18年に現役引退した後、野球解説者などとして活躍していて、NPBでの指導者経験はなかった。そのため、「未知数すぎる。リスクが大きい」、「指導のノウハウを学んでいない人間に任せられるのか」と不安視する声がなかったわけではない。

 ただ、ある球団OBは違った見方を示していた。

「新井さんは監督に向いていると思いました。野球エリートではないからです。アマチュア時代は目立った選手ではなかったが、ドラフト6位で広島に入団して、猛練習で長距離砲として花を咲かせました。球界を代表する選手になっても、『自分は下手くそだから』と謙虚さを失わず、先輩にかわいがられ、後輩に慕われていた。できない選手の気持ちが分かるって凄く大事なことなんですよ。現役時代に順風満帆に活躍してきた人は、監督になると失敗した選手の気持ちが理解できず、『なぜできないんだ』と感情的になってしまう。こうなると、選手の心が離れてしまう。でも新井さんは違う。怠慢プレーは指摘するけど、全力でやった結果の失敗は怒らない。だからチームの結束力が強いのだと思います」

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