反響が大きかった回は
そして最後はこの方。作者のけらえいこさんだ。反響が大きかった回について尋ねたところ、「声を出して笑った、と一番言われたのは……」と教えてくれたのは、母が自分の歩き方を街のウィンドーでチェックしていたら、中にいたサラリーマンがびっくりした回。母がゴールデンレトリーバーという犬種が出てこなくて、「リメンバーパールハーバーみたいな名前」と言った回=上=も反響が大きかったそうだ。



こうした反応から感じたのは、読者の人生や毎日に、この漫画が溶け込んでいることだという。
「例えば、冬、トイレを終えて、パンツ上げてインナーシャツ下げてインナーパンツ上げて……とやるときに、『あたしンちのお母さんと同じように、必ず現金書留のことを思い出す』と言ってくださる方がけっこういらして。必ず思い出してくださるのは、ご自身の体験と同等のインパクトなわけで、すごいな、と思ったりしました」(けらさん)
はい。私も重ねパンツをしていると、いつも思い出します。そして最後に。けら先生にとって、この30年間とは?
「漫画を描くこと、笑ってもらう方法について、ずっと考え続けた30年でした。というか、それしかやってこなかった感も」
作者も読者も、みんなが人生を共有してきたタチバナ家の物語。その尊い日常が、30年と言わず、永遠に続きますように。
(ライター・福光恵)
※AERA 2024年6月17日号