東京ドーム公演の後日、インタビューにこたえるTHE YELLOW MONKEYの4人

「一般的には“生きるか死ぬか”みたいな病気だったこともあって、“命っていつまでもあるものじゃないんだな”と痛感させられた出来事だったんですよね。それと同時にすごく背筋が伸びたんですよ。僕はデヴィッド・ボウイが大好きなんですが、彼ががんになって、死の宣告をされてからの作品はすごく良いんです。死だったり、余命だったり、“命のこと”を考えたときに新しいアートが出来るような気がするというか」(吉井)

「(吉井の)身近にいたつもりでしたし、僕らも紆余曲折をずっとみせてもらって。そのことは今回の作風にも出ているじゃなかと思います」(廣瀬洋一/ベース)

「オブラートに包んでくるのかなと思っていたんだけど、歌詞を見たときに“こんなにストレートに来るんだ?”と。本当に心境の変化があったんだなと実感しました」(菊地英二/ドラム)

 アルバムの最後の曲として収録された「復活の日」も、強く、真摯(しんし)なメッセージが込められた楽曲だ。それを象徴しているのが〈あなたとわたしの復活の日にぴったりだ〉という歌詞。この曲に限らず、リスナーにエールを送るような言葉が散りばめられているのもこのアルバムのポジティブなパワーにつながっていると思う。

「THE YELLOW MONKEYを結成した頃(1988年)の日本がすごく嫌いだったんです。バブルの真っただ中で、“日本人がもともと持っていた魂って、そうだったっけ?”と。だけど僕は日本を愛しているから、日本のカルチャーや伝統的なものを踏まえてロックにしていきたいと思ってスタートした。今回10枚目のアルバムを作るにあたり――自分がこういう状況になったのもありますけど――“今の日本、ちょっと弱くないかな”と思ってしまったこともあって。“日本って強くなったり弱くなったりしながら進んでいるんだな”と感じながら曲を作っていたところもあったので、それは歌詞を読んでいただければ感じてもらえると思います」(吉井)

 コロナ禍、ボーカリストの喉の病気という切実な状況を乗り越え、東京ドーム公演を成功させ、ニューアルバム「Sparkle X」を発表したTHE YELLOW MONKEY。平均年齢58歳のロックバンドが苦難にぶつかりながらも活動を続けていることは、ファンにとってはもちろん、同世代の人々に大きな勇気を与えることになりそうだ。

「このアルバムが復活の狼煙(のろし)になっている気がして。ライブもやりたいし、ここからまた新しい世界を広げたい。年は取っていきますけど、できることはまだある。衰えつつも、また何かを探して転がっていきたいと思っています」(菊地英昭)

(取材・文/森 朋之)

THE YELLOW MONKEY/吉井和哉、菊地英昭、廣瀬洋一、菊地英二の4人で1989年12月から活動開始。グラムロックをルーツに持つ独自のグラマラスなスタイルで人気を博し、1992年5月メジャーデビュー。ライブの動員、CD売上ともに90年代の日本の音楽シーンを代表するロックバンドとなるも、2001年1月8日東京ドームでの公演終了後、活動を休止。その後も休止状態のまま、2004年に解散する。その後、2016年1月8日に再集結を発表。同年、NHK紅白歌合戦への初出場を果たす。その後も精力的に活動し、2024年4月には約3年半ぶりとなる東京ドーム公演を開催。5月29日には5年ぶり10枚目のアルバム『Sparkle X』を発売した。

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森朋之

森朋之

森朋之(もり・ともゆき)/音楽ライター。1990年代の終わりからライターとして活動をはじめ、延べ5000組以上のアーティストのインタビューを担当。ロックバンド、シンガーソングライターからアニソンまで、日本のポピュラーミュージック全般が守備範囲。主な寄稿先に、音楽ナタリー、リアルサウンド、オリコンなど。

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