東大文学部3年の森山穂貴さん(21)は昨年、株式会社emome(エモミー)を立ち上げた。
同社は高齢者が施設に入居し、介護以外のエンタメ等含めたウェルビーイングを実現できる環境の創造に取り組んでいる。介護施設の入居者が楽しむための授業動画やコンテンツを提供する「シニアカレッジ」サービスなどを展開。コニカミノルタなど大企業10社程度と事業提携するまでに成長した。同社のメンバー12人のうち、行政に詳しい元区議会議長ら5人が社会人だ。
森山さんの通っていた高校はビジネス教育が盛んで、ビジネスの第一線で活躍する人を講師として招き、話を聞く機会が月に1度ほどあった。だが、「起業したいと思ったことはなかった」と当時を振り返る。
「高校時代にインドに行ったとき、現地の同級生が勢いよく手を挙げて自分の夢を語る姿を見て、日本の未来を担う世代に夢をもたらすような取り組みがしたいなと考えました。ただ、当時は『起業しよう』とは思わなくて。日本は変わらなくちゃいけないとは考えていたものの、それが起業には結び付かなかったんです」(森山さん)
学生ならではの強みも
高校卒業後は東大に入学したが、起業する学生たちを見て、
「どうせうまくいかないことに時間を割いても意味がない」
と、むしろ否定的だった。
ではなぜ森山さんは起業しようと思ったのか。ある日、ラーメン店でラーメンをすすっていたとき、ふと思ったのだという。
ここの店主は、起業してラーメンを作っている。コップもエアコンも、さかのぼれば誰かが起業して作っているんだ。自分は経験したことがない起業に、ビビっているだけなんじゃないか。起業しないまま偉そうに社会を語ることはできない。だったら一度、起業しよう──。
「東大の授業で起業家の話を聞けるのはまたとない機会でしたし、東大関連のベンチャーキャピタルは、投資とは関係なく、経営などの相談に乗ってくれました。学生でも自分からアクセスすれば起業の機会をつかめると思いました」