なぜ東大が最多なのか。東大文科一類2年の岡本花恋さんは言う。
「東大は起業する学生が多いですし、また起業ではなくても学生団体の立ち上げも盛んです。自分自身と同じ立場にある学生が起業していることに衝撃と刺激を受けています。私自身にとって、起業は全く別世界のものではなく、これから社会に出ていく大学生が当然の選択肢として自分の人生設計の中で検討することだと感じています」
東大生にとって起業が身近なことには、下地があった。実は東大が起業家教育プログラムを始めて、もう20年になる。
「今では起業家教育に関わる講義数は60にもなりました。かつては法学部を出て官僚になり、工学部の優秀なエンジニアはメーカーに入ることが、東大生に求められていたかもしれません。ですが、大企業も低迷する今は、新しい産業を作る場所に向かおうとするのは当然だと思います」(各務教授)
ただ、実際に卒業後すぐに起業する学生はわずかだ。一度就職して、数年後にベンチャーを立ち上げるケースもある。起業しなくてもいい。でも起業する選択肢は持っているのが今の学生だ。(編集部・井上有紀子)
※AERA 2024年6月3日号より抜粋