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 ADHDには活動的な人が多く、ASDには根気の必要な繰り返し作業が適しているという。発達障害といえども、それぞれの特性を生かせば、それはハンデではなく、強みになる。精神科医・岩瀬利郎氏の著書から成功例を紹介する。

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ADHDは実業家向き

ASDは職人や研究支援

 ここに紹介したように、ADHDの人も、ASDの人も、それぞれに特性を強みに変えていくことができます。発達障害の人というのは、その特性を上手に引き出せれば、定型発達の人と同等もしくはそれ以上の能力を発揮できる、大きな可能性を秘めた人たちなのです。
 

発達障害のおかげで成功できた

 たとえば、ニトリホールディングス代表取締役会長の似鳥昭雄さんは、70歳を過ぎてからADHDとの診断を受けたといいます。子どもの頃から注意散漫で、人の話が聞けず、整理整頓も苦手なうえに、忘れ物の名人。小学4年生まで、自分の名前を漢字で書けなかったのだとか。

 大人になってからも相当なご苦労をされたようですが、ある取材記事で、「発達障害のおかげで、私は成功できた」と仰っていたのが印象的でした。ADHDの特性である、興味のおもむくことにパッと飛びついていける行動力や発想力が、ご自身の成功につながったと考えられているのかもしれません。

 もちろん、それらの特性は、経営者やクリエイターなどの職業だけでなく、一般的な職務でも強みになり得ます。思ったことを素直に口に出してしまう特性は、「裏表がない」「ウソがない」という信頼感につながることもありますし、ときに話があちこちに飛んでしまうことも、程度にもよりますが、「話し好きの楽しい人」と認識されることもあります。

 ADHDの人は、その特性によってトラブルになりやすい半面、明るく社交的で人から好かれやすく、ムードメーカーとなることも少なくないのです。

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岩瀬利郎

岩瀬利郎

いわせ・としお/精神科医、博士(医学)。東京国際大学医療健康学部准教授。埼玉石心会病院精神科部長、武蔵の森病院院長、東京国際大学人間社会学部専任教授、同大学教育研究推進機構専任教授を経て現職。精神科専門医、睡眠専門医、臨床心理士、公認心理師。メディア出演も多数。

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