10歳頃の双子の娘たち。この頃から、次女が長女の「お姉さん」になり、可愛がってくれるようになりました。二人にしかわからない世界があるようで、双子って面白いなと感じます(撮影/江利川ちひろ)
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「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。

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 5月後半になりました。今月、高3の双子の娘は18歳になります。民法の改正により、現在では18歳になると成人です。「よくここまで大きくなったなぁ」と、今月に入ってから何度も思いました。前回、このコラムでも書いたように、「成人」を目前に今月はじめに医療的ケアが必要な長女が救命救急病棟に入院するなど、18年経ってもまだまだ安定とは程遠い日常を送っていますし、長女の学校卒業後の居場所が見つからない「18歳の壁」問題への不安もありますが、「これが我が家」と開き直れるようにもなりました。

 今回は双子の姉妹のことを書いてみようと思います。

長女の脳に大きなダメージ

 二人が生まれた時は、早産だったため出生直後に一緒に写真を撮ることも抱っこをすることもできず、娘たちはすぐにNICU(新生児集中治療室)へ運ばれていきました。特に次女は泣くこともできない程状態が不安定で、3カ月も早く産んでしまったことを本当に申し訳なく思いました。一方で長女は次女よりも大きく生まれ、人工呼吸器は必要でしたがとても安定していると聞いていたため、当時の私は毎日次女のことばかり気にかけていたように思います。

 ところが、退院前に頭のMRI検査を受けたところ(娘たちが生まれた病院では、出生体重が1500g未満の赤ちゃんは全員MRI検査を受けることになっていました)、次女は無傷でしたが、長女は頭の大部分にダメージを受けていたことがわかりました。その日を境に、私と夫の生活は大きく変わりました。何よりも楽しみにしていた娘たちの退院が恐怖に変わり、自分が「障害のある子どもの母親」になることを受け止めるまでにかなり時間がかかったように思います。

 でも、そんな時に私たち夫婦の支えになってくれたのが次女の存在でした。双子なので二人の成長の差を目の当たりにするたびに「この先、長女はどうなってしまうのだろう」と不安になっていたものの、次女の笑顔を見ると、その瞬間だけは自然と私も笑顔になることができました。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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双子にしかわからない絆