泣く次女に「仕方ないよ」と

 娘たちが幼児期の頃には、足が不自由な年子の弟の幼稚園が見つからず、一時期は私と子どもたちだけでハワイで生活をしました。医療的ケアが必要でてんかん発作もある長女には、温暖で湿度の低いハワイの空気がとても合ったようですが、もともと人見知りな性格の次女にはメンタル面で大きな負担をかけてしまったと思います。

 はじめてハワイへ行く日、空港で夫と離れるのを嫌がって大泣きした次女を無理やり連れて飛行機に乗せた時、早産してしまった時に感じた申し訳なさと同じような気持ちになりました。この頃の私のメンタルは常にめちゃくちゃで、この環境で生活をすることが次女にどの程度影響するのか不安になりながらも、当時の私にはそれしか方法がなく、どんなに泣かれても「仕方ないよ」としか言えなかったことを覚えています。

 そんな娘たちも成人になりました。現在二人は、双子とは思えないほどまったく別の生活を送っているのですが、家族にはクールな次女が、長女にだけはとても優しく接し、長女も次女の姿を見つけると目で追ったり声を出したりするなど、双子にしかわからない絆があるように見えます。

 我が家の唯一の健常児である次女は、長年「きょうだい児」としてさまざまな葛藤があったと思います。それでも、将来は医療に関わる仕事をしたい言い、つい最近自分で志望校を決めました。その姿を見て素直に嬉しかった半面、家族の存在が彼女の選択肢を狭めてしまわないようにフォローしていかなければと思っています。

 長女の障害がわかった時には不安しかなかった育児が、18年経ってかなり落ち着き、それぞれが生活を楽しむ余裕も出てきました。どん底だった当時の私に「大丈夫だよ」と伝えたいです。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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