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 子どもの脳はブレーキ機能が弱い。スマホ中毒に陥らないよう、わが子を守るためには何が大切か。眼科医・松岡俊行氏の著書から一部抜粋し、親の役割について解説する。

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 子どもの脳のブレーキは未熟

 60歳の前頭葉は12歳並み、という話を聞いたことがあるでしょうか。

 高齢者は何かとキレやすいようなイメージがあります。コンビニや飲食店で店員を怒鳴っていたり、電車で他人に説教をしていたり。イメージで偏見を持つのはよくありませんが、実は脳の仕組み的に、歳をとると怒りっぽくなりやすい理由があるのです。

 前頭葉というのは、感情の抑制などを行うブレーキのような役割を持っていて、20代で機能のピークを迎え、その後は徐々に衰えていきます。この機能の発達度合いを調べると、60歳と12歳で同じ程度だそうです。

 さて、何が言いたいのかというと、感情の抑制が効きにくい高齢者と同じように、子どもの脳はブレーキ機能が弱いということです。

 子どもが大きくなるにつれて、自分のスマホを欲しがるようになります。しかし、いつからお子さんにマイスマホを持たせればいいのかは、多くの親が悩むところでしょう。厳しいご家庭では、大学生になるまでは持たせないというところもあるようです。

 モバイル社会研究所が2023年11月に行った調査では、自分専用のスマホを持っている子が小学校6年生で5割を超え、スマホ所持開始の平均年齢は10・6歳でした。同じ調査によると、小学生のうちから持たせた家庭では、所持理由の1位が緊急連絡用となっています。

 中学生から持たせた家庭では緊急連絡用が1位であることは変わらないものの、小学生では4位だった「子どもから欲しいと言われた」が僅差の2位まで浮上しています。お兄さんやお姉さんがいれば、きょうだい間で遊ぶ機会も増えるでしょうから、一概にはいえませんが、私は自分のスマホを持つのは中学生ぐらいからでいいのではないかと考えています。

 先ほどの調査でも小学生のうちから安全のために持たせるケースがありましたが、低学年の場合は特に、スマホではなく機能が限られたキッズケータイで十分でしょう。マイスマホを買ってあげるときに気をつけておきたいのは、子どもが自分のスマホを持つことと、自由に使えることはイコールではない点です。

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松岡俊行

松岡俊行

松岡 俊行(まつおか・としゆき) 医学博士。眼科専門医。 大阪市出身。京都大学医学部医学科卒。2019年、大阪府吹田市に江坂まつおか眼科を開業。スマートフォンによる子どもの視力低下や、眼球運動、両眼視機能への悪影響などを懸念し「スマホアイ」と称して警鐘を鳴らす。

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子どもに任せて大丈夫か