私が20代・30代を過ごしたクラブ・ディスコのシーンでも、ステージ上の誰かが煽った動きを、フロアの客たちが一体となって真似るというのが、いちばん盛り上がるパターンでした。エアロビしかり、ボックスしかり、パラパラしかり、最終的には「全体主義」に勝るものはないのかもしれません。

 そして、そんな現実こそが、長年かかって日本人が辿り着いた西洋音楽との対峙法だったりするわけです。あのマスゲーム的な客席のノリを見るのが楽しみだという外国人アーティストも少なくないそうですし。
 

 せっかくの星野源さんの有意義な呼びかけに水を差すような内容になってしまいましたが、いかんせん「全体主義」→「個性尊重」→「型破り」の末に、「型破りな集団」が画一的な型(スタイル)を打ち出して、それが再び「集団行動化」するというのを繰り返しているのが、日本のオーディエンスの歴史なのです。

 一方で、今は全体主義的な客席を逆手に取った光の演出なども発達していますし、とどのつまり、お客様の手拍子イコール「お手を拝借する」という至極日本的な美意識と羞恥心を上手く操りながら、新しい景色を作っていくのが、これからの演者にとっての課題なのかもしれません。

 いじらしいぐらい、左右に手を振ったり、決められたところでジャンプしたり、コールや掛け声を欠かさなかったり、「アンコール!」を何分も叫び続けたり、そういった決め事があった方が、観客側も孤独にならず安心してコンサートやライブを「実感」できるのでしょう。

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