13人に1人が「困難者」
「東京だけでおよそ59万世帯、112万人が、都内では、公園や運動場などにつくる『仮設住宅』にも、アパートなど民間の賃貸住宅を借り上げる『みなし仮設』、さらには自分の資金で賃貸住宅の空き家を探しても入ることができなくなります」
こう話すのは、『災害対応と近現代史の交錯』の著書がある、専修大学の佐藤慶一教授(都市防災)だ。
佐藤教授は、国の被害想定や住宅統計データなどを組み合わせ、首都直下地震が起きた際、東京都(島しょ部を除く)でどれくらいの「仮住まい困難者」が生まれるか、都の被害想定や国の統計を用いて試算した。
その結果、最悪の場合、「全半壊・焼失」が都内全体で112万世帯に上った。これに対し、自治体が用意できるプレハブの仮設住宅は4万戸、みなし仮設を含めた賃貸住宅空き家が49万戸で、計53万戸分。全半壊世帯数から利用できる仮住まい数を引くと、59万世帯の住民が、仮設住宅も賃貸住宅も確保できない「仮住まい困難者」になることがわかった。59万世帯を人数に換算すると、約112万人。実に、都民の13人に1人が行き場をなくすことになる。
最も多いのは足立区の18万2千人、次いで江東区と大田区でいずれも15万9千人、世田谷区の15万6千人。こうした場所は、地震の揺れや火災による被害が多い場所だという。
約100年前の関東大震災でも大勢の人が家を失った。当時の東京市の人口約255万人のうち、6割にあたる150万人が家を失い、同市外に避難した人は約100万人に及んだ。ただ当時は、東京に住む人は地方に実家がある人が多く、そこに避難することができた。
しかし今は、地方に「故郷」を持たない人は少なくない。しかも、知らない土地に移り住む「疎開」は、仕事や子育て、地域とのつながりなどの関係で、簡単ではない。かといって仮設住宅やみなし仮設、自力で賃貸空き家に入居するにも限界がある。被災した危険な自宅での生活を余儀なくされる人が膨れ上がるだろうと、佐藤教授は見る。
「住む場所が被災する可能性を知り、自分たちに何ができるか考えることが必要です」