パ・リーグ球団の打撃コーチも同調する。
「ビシエドの魅力は広角に安打を弾き返せること。高めの直球にバットをかぶせて打つ技術も光ります。ホームランバッターではなく、球場の広さに左右されないので安定した成績を残せる選手だと思います。打率.280、15本塁打は計算できる。一塁の守備もハンドリングが巧く、内野手は安心して投げられる。12球団の助っ人を見回しても、能力の高さはトップクラスです。攻守で十分に戦力になりますよ」
ビシエド人気の背景に、NPBの投手のレベルが上がり、助っ人外国人が来日1年目から活躍できる時代ではなくなっている現実がある。セ・リーグで規定打席に到達している外国人選手は、ヤクルトで共に来日4年目のドミンゴ・サンタナ、ホセ・オスナのみ。パ・リーグは5人の外国人選手が規定打席に到達しているが、際立った活躍をしている選手は少ない。
西武が逆襲するには不可欠
とくに「ビシエドがほしいのでは」といわれるのが西武だ。4番として期待された新外国人のヘスス・アギラーは30試合出場で打率.204、2本塁打、10打点と力を発揮できず今月8日に登録抹消。同じ新外国人のフランチー・コルデロも14試合出場で打率.176、1本塁打、3打点と振るわず、外野の守備難も露呈して4月15日に早々とファームに降格した。
チームはリーグ最下位に低迷し、深刻な得点力不足がネックになっているだけに、西武を取材する記者は「ビシエドの獲得に乗り出すべきです」と強調する。
「今の西武は打線に迫力が全くない。ベテランの中村剛也も全盛期を越えていますし、過度な期待は酷です。ビシエドが入ることで若手の出場機会が失われるという指摘がありますが、一塁と指名打者でビシエド、中村に割って入るような力がなければレギュラー定着は望めません。貧打で投手陣を見殺しにしている試合が続いている中、ここから逆襲をもくろむなら、打線のテコ入れは不可欠です」
シーズン途中に助っ人外国人選手がトレード移籍するケースは、決して珍しくない。新天地で活躍した代表例が元DeNAのエドウィン・エスコバーだ。日本ハムに17年に入団したが、1年目のシーズン途中にDeNAに移籍。19年にリーグトップの73試合登板するなど、4年連続70試合以上登板と鉄腕ぶりを発揮して救援陣を支えた。チームメートの山﨑康晃から教わった日本語の「男は黙って投げるだけ」がお立ち台の決め台詞に。ファンから愛される選手だった。
来日通算135本塁打をマークしたゼラス・ウィーラーもトレードを経験している。15年に楽天に入団し、17年に自己最多の31本塁打を放つなど勝負強い打撃で活躍したが、20年は外国人枠の関係で開幕からファーム暮らしに。出場機会に恵まれなかった状況で、同年6月に池田駿とのトレードで巨人に移籍。21年に規定打席に16打席足りなかったが、来日以来最高の打率.289、出塁率.358をマークした。