小児病棟に入れない

 偶然にもこの原稿を書き始めた日の夜、長女がけいれん発作をきっかけに呼吸不全を起こし入院しました。この病院は長女が生まれたところであり、0歳から何度も入院していますが、制度により15歳以上は小児科病棟には入れないため、主治医が小児科のドクターでも成人病棟になります。今回は週末の夜間だったこともあり、万が一の急変に備えて一般病棟ではなく、全身管理と集中治療ができる救命救急病棟に入院することになりました。病棟の看護師さんたちはとても優しく声をかけてくださいましたが、やはり小児科の雰囲気とはまったく違います。今回は救命病棟ということもあると思いますが、病棟に提出する書類に「蘇生処置を希望するか?」や臓器提供に関する質問があり、社会福祉士の実習で医療従事者側として見てきた場面が、母親として質問されるとやはり少し戸惑ってしまいました。 

人工呼吸器の扱いに不慣れ

 また、人工呼吸器の扱いの慣れ具合も小児科とは違いました。長女が使っている人工呼吸器はこの病院で管理されており、小児科病棟では同じ型の人工呼吸器を使用しているお子さんが他にも必ずいましたが、救命病棟であっても成人科ではまだ人工呼吸器の使用が小児科ほど頻繁ではないと知りました。小児科のドクターも一緒に看護師さんに操作の説明をしたものの、今回の入院では人工呼吸器の着け外しは小児科のドクターが行うことになりました。

 一方で、「かわいい」や「癒やされる」と笑顔で言ってくれる看護師さんも複数いて、ご高齢の方が多い成人病棟では、17歳の医療的ケア児はまだまだ幼く見えてかわいがってもらえる存在のようです。おそらくこの雰囲気は長女だけに限らないことだと思います。ケアをしてくださる看護師さんのこうした気持ちから、何らかのかたちで受け入れにつながっていくと良いと思いました。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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