「多すぎたので細工した」

「ごまかしといた」

 女性は他の教員からも、勤務記録を自分で書き換えたと聞いた。「どの学校もこういうものなんだろう」。そう思い、さほど気にはしなかった。だが、勤務時間を巡る疑問は、それだけにとどまらなかった。ある日、管理職からこう言われたのだ。

「1日、削っといたから」

 授業準備が終わらず、やむを得ず土日に出勤していた月だった。時間外勤務は80時間を超えたが、そのまま提出していた。実際にそれだけ働いたのだから認めてほしいという思いもあった。管理職の説明では、休日1日分の勤務を全て消し、結果的に時間外労働は79時間になったという。「オーバーしてたから」。管理職はこの時も、自分を気遣ってくれているような口ぶりだった。

 普段お世話になっている上司。とっさに「ありがとうございます」という言葉が口からでた。だが、時間が経つと疑問がわいた。

「なんで減らさないといけないの」

 気持ちが収まらず、他の学校の先輩に聞いてみたが、「超えるといろいろ面倒くさいぞ」と諭された。友達に話しても「超えても給料変わらないんでしょ?」と問題視していない反応だった。それでも、怒りはとまらなかった。

「私のやった仕事は79時間でできるものではない。頑張ったのに、なかったことにしないで」

 公立小中の教員6人に1人は「勤務時間改ざんを求められたことがある」

 学校の働き方改革を推進してきた文科省は近年、勤務時間の適切な管理を重視してきた。2017年には「労働法制上求められる責務」として勤務時間の記録を各教委に通知した。19年のガイドラインでは、出勤から退勤までの時間を労働時間とみなして正確に把握するよう求めた。文科省の担当者は「労働時間を把握することで長時間労働の原因分析や改善につながる」という。

 ただ、報告は各校にゆだねられ、正確に実態を反映しているか検証するすべはないのが実情だ。

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持ち帰り仕事を含めると100時間超え