野球評論家の江本孟紀氏も言う。

「いまの侍ジャパンは歴代でも最高のチームですが、ラグビーW杯のように、格上の相手がいない大会。日の丸だ世界一だと盛んに喧伝されていますが、出場十二ヵ国の戦力格差が激しすぎます。WBCで取り分に不満を持つ日本チームにとって、この大会は大切な“商売”なんですよ」

 二〇一三年のWBC第三回大会の直前、利益配分が不公平だとして日本球界は大会ボイコットを仄めかしたこともある。日本は世界のお財布だったのだが、昨年、日本球界は「株式会社NPBエンタープライズ」を設立し、侍ジャパンを会社化した(NPBは社団法人のため営利活動に制限があることから)。プレミア12では、観客動員やグッズ販売等による収益が確保される。日本球界にとっても、日本開催のプレミア12は美味しいのだ。

 プレミア12は、四年ごとに行なわれるWBCの中間年に開催されるので、これからは奇数年には野球の国際大会が開かれ、偶数年にはオリンピック・パラリンピックとサッカーのW杯が交互に開催されることになる(人気急上昇のラグビーW杯も奇数年で四年ごと)。

 もともと野球の国際大会にはさまざまな構想があった。たとえば、まずはアジアブロックを組織し、日本、韓国、台湾、中国などの優勝チームがアジアチャンピオンシップを競い、その勝者がメジャーリーグの優勝チームと戦う――、というようなものだったが、その夢と構想はWBCとプレミア12で結実した。だが、まだ問題は数多く残っている。

「WBCと違い、現役のメジャーリーガーは不参加。球界に内紛を抱えるメキシコは辞退しようとしたほどで、急造チームにはメキシコ出身者が四名しかいない。中南米のチームには本業の傍ら野球をしているような選手がゴロゴロいます。本気なのは、日韓台の三ヵ国くらいじゃないでしょうか」(スポーツ記者)

 サッカーのW杯予選出場国が二〇〇ヵ国と地域を越えるのに比べ、WBC参加国は二十八と圧倒的に少ない。二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックで野球とソフトボールは競技に復活するが、その後のことはわからない。

 だから、WBCと、今年初開催されたプレミア12の成功が、野球とソフトボールの普及やこれからに大きく左右することになる。野球ファンとしては、この国際大会がフェイドアウトしないことだけをただただ願うのみだ。

 さて、プレミア12第一回大会の「初代王者」に輝くのはどの国か――?
 それにしても過日の韓国戦は残念だった。あんなことが起こるのが野球とはいえ。

参考記事:週刊文春11月19日号
デイリースポーツ11月20日付他