リニア中央新幹線の実験車両。「早期の完成を目指して全力で取り組む」とJR東海。だが、地震によるリスクや、環境、沿線住民の生活破壊など課題は多い
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 静岡県の川勝平太知事の辞職表明で、前進に期待の声が上がるリニア中央新幹線。だが、様々な問題が横たわる。AERA 2024年5月13日号より。

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 東京-名古屋間を40分、将来は東京-大阪間を67分で結ぶ。時速500キロで走り、「空飛ぶ地下鉄」とも呼ばれるJR東海のリニア中央新幹線。静岡県の川勝平太知事が環境問題などを理由に工事に反対していたため、当初目標としていた「2027年」の開業を断念していた。それが4月、川勝知事が突然の辞職を表明。早期の開業に弾みがついたといわれる。だが、リニアには数々の問題が指摘されている。まずは、地震だ。

「リニアが地震に強いということは決してない」

 こう指摘するのは、『リニア新幹線と南海トラフ巨大地震』の著書を2021年に出した、地震学者で神戸大学の石橋克彦名誉教授だ。

 リニアで採用されているのは「超電導リニア」と呼ばれる世界初の国産技術。強い磁力で車両を約10センチ浮かせ、U字型の「ガイドウェイ」の中心を非接触で走行する。そのため「地震で脱線することはない」というのがJR東海の説明だ。だが、石橋名誉教授は「脱線しないという説明はまやかし」と言う。

「リニアは、早期地震警報システムが地震発生をとらえると、走行中の列車は急減速し支持車輪で普通の鉄道列車と同じように接地走行となります。そこを激震動が襲えば、ガイドウェイと列車がともに激しく揺さぶられ、両者の揺れ方の違いで激しく接触し、ガイドウェイが損壊して列車が外に飛び出すことが起こり得るでしょう」

 リニアの特徴は、超電導リニアという技術もさることながら、品川-名古屋間約286キロの約86%がトンネルという点だ。

 石橋名誉教授は「一般に地下は地震の揺れが小さい」としながら、「地震規模が大きかったり震源域に近かったりすれば、被害は起こり得る」と語る。

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