だが、監督就任1年目の昨季は65勝77敗1分で5位、今季もスタートダッシュで大きくつまずいた。現役時代から取材するテレビ関係者は、こう指摘する。
「優しすぎるかなと感じますね。監督はシビアな面を持ち合わせていなければいけないが、松井監督は怒りを前面に出すことが少ない。怒ればいいというわけではないけど、ピリッとした雰囲気は必要です。今の西武は優しい選手が多く、雰囲気が少し緩い。試合も粘り強さがなく、西武特有のしぶとさが消えている。暗黒時代に突入しなければ良いのですが……」
チーム内の競争が激しい日ハム
西武と対照的に、チーム改革が順調に進んでいると言えるのが日本ハムだ。新庄剛志監督が22年に就任して2年連続最下位に沈んだが、今年は4月終了時点で貯金5の2位。昨季25本塁打とブレークした万波中正、打率3割7分を超えるハイアベレージで正捕手をつかもうとしている田宮裕涼と、若手が次々に台頭している。
北海道のメディア関係者は、新庄監督を絶賛する。
「新庄監督が就任した3年前は主力選手がごっそり抜け、松井稼頭央監督が就任した時の西武と比べものにならないほど戦力的に弱かった。でも2年間若手を我慢強く使い続け、今年はAクラスを十分に狙える。3年でここまでチームを成長させた手腕は凄いですよ」
新庄監督は派手なパフォーマンスや言動が注目されるが、野球に向き合う姿勢は非常に厳しい。走塁や守備でのボーンヘッドにベンチで怒りを露わにし、苦言を呈することも。就任会見で「全員に平等にチャンスを与える」と明言した通り、就任1年目の22年は支配下の日本人選手全員が1軍で試合に出場した。新監督が就任すると若返りを進める傾向があるが、新庄監督の場合は違う。年齢関係なく実力主義を徹底する。その結果、伸び悩んでいた中堅の松本剛がプロ11年目で自身初の首位打者を獲得。栗山英樹前監督の時に主力として活躍した中島卓也は近年出場機会を減らしていたが、今年は開幕1軍スタートで代打、代走を中心に重要な役割を任されている。一方で若手のホープとして起用されてきた清宮幸太郎、野村佑希でも、調子を落とせば容赦なく出場機会が減る。選手を色眼鏡で見ないから、チーム内の競争が激しくモチベーションが高い。
他球団の首脳陣は、「選手層が厚くなり、攻守で野球の精度が上がってきている。敵ながらいいチームだなと思いますよ」と評価する。今年は優勝争いにシーズン終盤まで食い込めるか。パ・リーグの台風の目になることは間違いないだろう。