護得久:これまでで一番苦労した子どものレファレンスは、棚を指さして「あの本とこの本の間にあった本」(笑)。あとは、大人の方の質問では、大事に持っていったケーキをおばさんにやっと渡したら箱を揺さぶっちゃった話と、山手線の網棚の上に何かを置いた話。これもたどりつけませんでした。むしろ昔話の方が、ストーリーラインが地域によって違っても、大きな筋が一緒なので調べやすいです。

図書目録の表紙を見て

 その一方で、一発で探せた本もあります。今回私のおすすめの本でご紹介している『べんけいとおとみさん』(福音館書店)です。赤ちゃんを抱っこしたお父さんが「べんけいさんの本ありますか」と。「べんけい」という名前の出てくる本が2冊思い浮かんで、最初に『べんけいとおとみさん』をご案内したら、「これです!」と。子ども時代にお好きだったみたいです。この本もこの4月にリクエスト復刊されました。

東京子ども図書館50周年記念で、今年4月に復刊された童話セット。『べんけいとおとみさん』もこの中の一冊(撮影/写真映像部・和仁貢介)

鈴木:「探しもの」にちなんでぜひおすすめしたいのは、『ねずみのいえさがし』(童話屋)という本です。「ねずみのほん」というシリーズで、1作目では家を探しますが、2作目は友だちを、3作目は食べものを探します。小さな写真絵本で素朴でかわいいので、2〜3歳くらいの子が、はじめて図書館にきて緊張しているようなときに、「一緒に読んでみない?」と声をかけると、必ず2冊目も、3冊目もとなって、子どもとの距離が近くなるんです。

護得久:司書の私たちでも本を探すということは難しいものです。でも手がかりをもとに探すことは楽しいんですよね。東京子ども図書館では、子どもたちに手渡したい本を集めた『絵本の庭へ』『物語の森へ』『知識の海へ』(すべて東京子ども図書館)という推薦図書目録を出版しています。これは図書館でも借りられますし、購入もできます。タイトルや人名などから検索できるだけでなく、モノクロですが書影を載せていますので、表紙を見て「この本!」と思い出すこともあると思います。子どもたちも絵本を書いた人が誰かわからなくても、表紙を見て『はらぺこあおむし』(偕成社)の人でしょうってことは言えるんですよね。

受賞作をさがしても

鈴木:大人が子ども時代に読んだ本を探すということであれば、児童図書賞の受賞作をさがしてみてもいいかもしれません。当館分室のかつら文庫は、1947〜2011年に主な日本の児童図書賞を取った作品を年代順に展示しています。見学にいらした方が、その棚の前で、「あっ、この本!」と声をあげることがよくあります。自分で国立図書館や県立図書館に問い合わせをしなくても、身近な図書館のレファレンスのカウンターの人が、順番に大きなところに問い合わせをしてくださったりもします。図書館はいろんなレファレンスツールを持っています。図書館員しか使えないツールもあります。そこからたどりつけることもあるはずです。

(編集部・三島恵美子)

AERA 2024年4月29日-5月6日合併号

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三島恵美子

三島恵美子

ニュース週刊誌「AERA」編集部で編集や記事執筆、書評欄などを担当。書籍の編集も多数経験。

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